コロナ禍で自治体が対面主義見直しデジタル化推進 岐阜

板倉吉延
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 新型コロナウイルスの感染拡大で「新たな生活様式」が模索されるなか、各自治体で市民サービスの手続きをデジタル化する取り組みが進んでいる。県はデジタル技術で変革を進める「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の推進に向けた「県DX推進本部」を月内にも発足させるほか、市町村もそれぞれに取り組んでいる。

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 10月29日の知事会見。古田肇知事はコロナ対策の一環として「ウィズ・コロナのみならずアフター・コロナをにらみ、色々な分野でDXを戦略的に進めていきたい」と述べた。

 県が目指すデジタル施策は多岐にわたる。無料通信アプリ「LINE」を用いた行政サービス導入で職員募集などを電子申請できるようにするほか、AI(人工知能)が対話形式で質問に回答する「チャットボット」により、行政相談をスマホで24時間、365日可能にする。

 パソコンでの定型の事務作業を自動化するシステム「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」で職員の負担を減らすほか、農林業、企業、観光でのDXも推進する。

 県は年内にも市町村や経済団体を含めた県DX推進協議会を立ち上げ、扱う電子申請の種類などの検討を始める。今年度中に推進計画の骨子案をつくり、来年9月の計画策定を目指す。県情報企画課の担当者は「法令で難しいものをのぞき、できるものは全て電子化を目指したい」という。

 一部の市町村では、これを先取りする形で電子化が進む。市民窓口でロボットによる案内、住民票などの申請時に申請者情報を印字して記入を減らすシステムの導入など「電子市役所」を進める大垣市。昨年度には約8千万円を電子市役所の整備などに投じた。

 小川敏市長は今年7月、県内初となる行政手続きのオンライン化を進めると発表した。スマホやパソコンから、市のホームページやLINEアカウントを通じて行政手続きができるようにする。

 健診やイベントの申し込みなど、本人確認が不要な手続きはオンラインで終えることができるようになるという。証明書交付や保険・医療関係の手続きなど、本人確認が必要な場合も、事前登録により、待ち時間短縮などが期待できる。小川市長は「市民と行政をオンラインで結ぶことで、新型コロナと共生し、脱する社会を目指す」と話す。

 大垣市はAIによる対話型FAQサービスでの行政相談を昨年度から始めた。羽島市は今年5月に新型コロナの相談分野で、9月には移住相談で、AIチャットボットを導入した。「来年度に全庁に広げる方向で年末から試行段階に入りたい」と市総合政策課の担当者は話す。岐阜市中津川市でも今月から運用が始まった。RPAの導入も県内の複数市で始まっている。

 こうした動きの背景には、コロナ禍で対面主義が見直されたことがある。国の10万円の特別定額給付金の手続きの混乱や持続化給付金の給付遅れ、不正申請が起きた反省などから行政の電子化の必要性も高まっている。

 県によるDX推進について、ある自治体の担当者からは「後から別のシステムが導入されれば、作業が二度手間になる恐れはある」と懸念の声も聞かれた。大垣市の担当者は「国がマイナンバーカードを使ったシステムを打ち出せば、後々それに合わせることになるが、市としては先行して取り組んでいく」と話す。

 県情報企画課の海蔵敏晃課長は「協議会で先行自治体から学び、課題を明らかにしたい。国には早期に方針を示すよう求めていく」とした上で、「岐阜市や大垣市など先行する自治体を牽引(けんいん)役として、規模の小さい自治体も含めて電子化を進めたい」と話す。

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 岐阜市の「AIチャット総合案内サービス」を利用してみた。新型コロナが不安でもあり、発熱時を想定し、入力してみる。「熱があるのですが」と打ち込むと、市のコロナに関する支援や相談窓口が案内され、その先で総合案内の電話番号も示された。市のHPで探すよりも便利だ。音声入力で対応できるようになれば、体調不良の際にも探しやすいかもしれない。

 行政サービスは自治体で様々だ。転勤のたび、制度の違いに戸惑うこともあった。先行例をうまく取り込みながら、ある程度足並みをそろえて進むことで、どこでも便利に行政サービスを受けられる仕組みが広がれば、と感じた。(板倉吉延)

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