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 新型コロナウイルスの感染拡大で、様々な「祈りの場」が脅かされている。キリスト教のミサやイスラム教の集団礼拝など大勢の人が一堂に会する活動は中止や縮小を余儀なくされた。そうした苦悩を、さまざまな工夫で乗り越えようとしている。(松田果穂)

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 「お寺の大事な機能の一つに『布教と伝道』があるが、それができない」。800近い檀家(だんか)を抱える清光寺(前橋市大手町1丁目)の高橋審也住職(77)は、そう話す。

 コロナ禍でも葬儀や法要の回数にそれほど変化はないものの、月に一度、檀家らに仏の教えを説くために開いていた集まりは、緊急事態宣言が発令された4月以降、中止が続いている。

 檀家には高齢者も多く、感染リスクが高い。一度に70~80人がお堂に集まるため十分な対策も取りづらく、中止はやむを得ないという。「みんなで心を合わせるために集ってお参りをするのは、どの宗教も同じ。人と人との心のふれ合いができず、顔を合わせられない寂しさはある」

 法話を動画で配信するとしても、機器の操作に慣れない高齢者は多い。感染拡大が収まり、再び集えるようになるのを待つしかないのが現状だ。高橋住職は「時期を見て再開したいと思いつつも、タイミングが難しい」と肩を落とす。

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 キリスト教徒にとって毎週日曜日のミサは、キリストの血と体とされるぶどう酒とパンを自身の体に受け入れる、最も大事な祈りの場だ。だが、埼玉、群馬、栃木、茨城で約2万人の信者を抱えるカトリックさいたま教区は2月から4カ月ほどミサの中止が続いた。

 そんな中始まったのが、双方向のオンライン会議システム「ZOOM(ズーム)」を使った「オンラインミサ」だ。6月のある日曜日、館林教会(群馬県館林市大手町)の山野内公司さん(63)が司祭を務めるミサには、教区内だけでなく東京や静岡、山梨などの信者ら約10人が参加した。

 オルガンの演奏とともにミサが始まると、信者らは手を合わせたりしながら、それぞれ祈りを捧げた。山野内さんは「教会で開けばあいさつや世間話で人と人のつながりが自然と生まれるが、コロナ禍ではそれが難しい。だが、動画の配信ではなく会話ができるZOOMを使うことで、遠くの信者同士でもつながりが生まれ、かえって良かったこともある」と話す。

 さいたま教区のミサは6月下旬に再開されたが、山野内さんは独自に、ロザリオを手繰りながらキリストの生涯の出来事を黙想する「ロザリオの祈り」や、信者同士で聖書を読む「聖書の分かち合い」を日本語、ポルトガル語、スペイン語を使い分けてオンラインで続けている。「教会には本来、存在そのものが人々に安心感を与える力がある。たとえネット上でも、母国語で話せる場を提供して喜ばれるなら、求められる限り続けたい」

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 群馬県内に1万人近くいるとされるイスラム教徒も、モスクに集まって祈る回数を減らすなどしている。伊勢崎市喜多町のモスクでは、金曜日の集団礼拝はマスクの着用や手指の消毒などの対策を講じて続けているが、毎週土曜日に約150人が集まり、3時間ほどかけて行う礼拝は2月から中止している。

 モスク代表のマリク・イジャズさん(32)は「商売もモスクの集まりも、何もかもぐちゃぐちゃ」と嘆く。4~5月に1カ月続いたラマダン(断食月)は通常、日没後にモスクに集まって夕食をともにしていたが、今年は中止になった。

 モスクでは子どもたちにコーランを教える講座も開いているが、一部はビデオ通話に切り替えたという。

 1日5回の礼拝は一人でもできるが、「集まることに意味がある」とイスラム教徒の男性(41)は言う。「祈る前に体を清めるのも、礼拝の動きで体を動かして血の巡りが良くなるのも、神のためではなく人のための教え。集まって祈ることにも、人と人が互いに支え合う場をつくる意味がある」という。

 マリクさんは「『イスラム』の語源は『平和』。ムスリムだけでなく世界中の人が笑顔で穏やかに暮らせる日が早く来るように、終息を祈るばかり」。

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 遠く離れた人にも、お別れの場を――。そんな思いから、葬儀のライブ配信などで遠隔地から「参列」を実現するサービスも、コロナ禍に生まれた。冠婚葬祭業のメモリード(本社・前橋市大友町1丁目)は4月から「葬儀WEBトータルサービス」を提供している。

 足腰の弱い高齢者向けのサービスを想定して2年ほど前から開発を始めていたが、サービス開始時期と緊急事態宣言が偶然重なり、反響が広がった。

 遺族は葬儀の案内をLINEなどのSNSで送信でき、「オンライン参列」を希望する人は供花や香典を簡単にクレジット決済で送ることもできる。葬儀の様子はスタッフが撮影し、ユーチューブで無料配信。公開期間も遺族の希望で設定し、録画でも見ることができる。

 サービス開始後の半年で100件以上利用された。県内での葬儀を東京都内に住む故人の孫にライブ配信したり、都内での葬儀を米国にいる故人の息子にライブ配信したりしたという。

 利用者からは「本当なら直接参列したいところだが、ライブ配信でお別れの場ができて気持ちの整理もつき、助かった」などと好評という。IT事業部の戸塚淳一さん(56)は「コロナ禍でなくても広く利用してもらえるサービス。直接お別れできなくても、せめて画面越しに故人をしのんでほしい」と話す。

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