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 秋田県男鹿市の伝統行事「ナマハゲ」を題材にした映画「泣く子はいねぇが」が、20日から全国で公開される。秋田市出身の佐藤快磨(たくま)監督(31)が5年前に着想し、男鹿に何度も通って脚本をつくった。ナマハゲ行事を通じ、父親になるとはどういうことかを考える若者の物語だ。

 主人公は、親になること、大人になることから逃げてしまった若者・たすく(仲野太賀)。たすくには娘が生まれたばかりだが、父親としての自覚を持てずにいる。そんな中、ナマハゲ行事に参加し、妻との約束を破り酔っ払って、ナマハゲの面をつけたまま全裸で走る姿が全国放送されてしまう。地元や家族を避けて上京したたすくは2年後、過ちに向き合おうと男鹿に戻る決心をする――。

 脚本も自ら手がけた佐藤監督は、今作が商業映画デビュー。5年前に着想してから4年連続で大みそかのナマハゲ行事に参加するなど、現地で取材を重ねてきた。映画は昨年12月から今春にかけて男鹿市内などで撮影された。

 今月5日には市内で舞台あいさつと試写会があり、佐藤監督と、出演俳優で大仙市出身の柳葉敏郎さん(59)が登壇した。県民ら約300人の観客を前に、佐藤監督は「この日を迎えたことをうれしく思う。男鹿には知り合いが一人もいない状態でスタートしたが、5年経って男鹿の方々の顔を思い浮かべられるようになった」と、喜びをかみ締めるようにあいさつした。

 鬼のような形相でうなり声を上げ、子どもたちを怖がらせる印象が強いナマハゲ行事だが、佐藤監督は「ナマハゲは子どもをただ泣かせるのではなく、親が子を守ることで男の心を父親にする行事なのではないかと思い至った」という。「決して男鹿のいいところばかり描く作品にはしたくなくて、たくさんの方々からお話を聞いて誠実な映画を撮りたい思いが強くあった。どう受け止めてもらえるか緊張しているが、見てもらえれば」

 なまはげ存続の会の会長役で出演した柳葉さんは「楽しい会話のままシーンが撮れて、役作りしねかったっす(しなかったです)。そのくらいリラックスした撮影現場でした」と秋田弁を交えてあいさつ。「同じ秋田県人として、あたかも男鹿の仲間に入れたみたいな空気をみなさんが作ってくださった」と感謝した。

 試写会には、男鹿市民らでつくる「佐藤監督を応援する会」の会員らの姿もあった。会長を務め、撮影をサポートしてきた糸井真吾さん(52)は、関係者向けの上映を含めて今回が3回目の鑑賞という。「映像を見て裏の裏が分かるというか、言葉で説明しすぎない映画で、私も見るたびに発見がある。子どもから大人まで何回も見ていただきたい」と魅力を語った。

 同作はスペインで9月に開かれたサンセバスチャン国際映画祭で最優秀撮影賞を受賞している。県内での一般公開は秋田市のイオンモール秋田内「TOHOシネマズ秋田」と、大仙市の「イオンシネマ大曲」で。(高橋杏璃)

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