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 宇都宮市長選で5選を決めた佐藤栄一氏(59)は16日に会見し、「新型コロナウイルス対策を継続しなければならない。国の施策をみながら市独自の施策を付け加えていく」と抱負を語った。

 次世代型路面電車(LRT)事業を問題視する須藤博氏(77)が一時凍結・中止を掲げ、今回も大きな争点になった。佐藤氏は「市民が興味を持ち、理解してもらう作業を続ける。車両納入などの機会をとらえて、理解・関心を高めていく」と語った。

 LRTのJR宇都宮駅西側延伸については、バス事業者との協議などが整えば計画を公表し、着工に向けた手続きを進める方針を示した。「5期目の任期中に国の認可を得る段階まで進めたい」との見通しを明らかにした。

 投票率は41・07%と前回を0・46ポイント下回った。「本当に低い。町づくりに参加してもらうところから数字を上げる流れをつくりたい」と語った。

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 15日夜、現職の「当選確実」の一報が伝わると、事務所に集まった支持者たちは、敗れた須藤氏を拍手で迎え入れた。推薦した野党関係者は「LRTは間違いだったことを、いずれ歴史が証明するだろう」とあいさつ。須藤氏も「LRTは禍根を残す」と持論を展開した。

 須藤氏は記者団に「時間がない中で、十分に戦った。ただ勝ちにいったので満足していない。知事選に引っ張られてしまった」と語った。(中村尚徳、池田敏行)

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 現職が大差で圧勝した。それでも、LRT一時凍結を掲げ、告示1カ月前に立候補表明した新顔に3割を超す得票が集まった。1年半後の開業をめざし工事が進む段階で、4たび争点となった事実は軽くない。

 期日前投票所でも反対論は根強かった。約280人に賛否を尋ねると、「反対」は約35%。「賛成」の約32%を上回った。「賛成」の中には「工事が始まり後戻りできない」「仕方ない」などと否定に近い意見も目立った。推進してきた現職を支持した人でも「賛成」は半数に満たなかった。

 計画は前々市長時代に検討が始まり、1993年度に研究会が設置された。2008年以降の市長選で毎回争点になってきた。これだけ長期間にわたる計画にもかかわらず、なぜ反対論がくすぶり続けるのか。

 賛否を問う住民投票が市議会で3回否決されたことも影響している、との指摘もある。市民の声に耳を傾け、多額の税金を投入する意義を丁寧に説明する姿勢が十分だったのか、問い返す必要がある。

 スペインの哲学者オルテガが、民主主義の本義を言い表した言葉に「反対者とともに統治する」がある。そうした視点を欠き、選挙で信任を得たと数の論理で押し切っては民主主義は形骸化する。それはLRTに限ったことではない。

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