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 米ニューヨーク株式市場で16日、主要企業でつくるダウ工業株平均が9カ月ぶりに過去最高値を塗り替えた。新型コロナウイルスのワクチン実用化への期待が、米株価をコロナ危機前を上回る水準まで押し上げた。市場は米経済の先行きに楽観を強めているが、足元の感染状況は悪化の一途をたどっており、大崩れするリスクもくすぶる。

 ダウ平均は16日、前週末比470・63ドル(1・60%)高い2万9950・44ドルで取引を終えた。2月12日につけた終値ベースの過去最高値(2万9551・42ドル)を更新し、史上初となる3万ドルの大台まで50ドル足らずに迫った。

 この日の株高につながったのは、米製薬企業モデルナによる新型コロナのワクチン開発の発表だ。最終的な臨床試験(治験)の結果、発症を防ぐ効果(有効性)が94・5%あったという。前週には米製薬大手ファイザーも「90%以上の有効性があった」と明らかにしていた。

 両社は近く、米食品医薬品局(FDA)の緊急時使用許可を申請する。FDAは少なくとも50%以上の有効性を薬事承認の条件としている。事前の想定を上回る数字が相次いだことで、市場ではワクチンの早期実用化で感染が抑えられ、経済回復も早められるとの期待が高まった。

 16日に大きく上昇した銘柄はボーイングやユナイテッド航空、ウォルト・ディズニー、エクソン・モービルなど、コロナ禍による経済活動の停滞が業績を直撃した業界が目立った。逆に、ネットフリックスやズーム・ビデオ・コミュニケーションズなど自宅勤務拡大の恩恵を受けてきた銘柄は売られた。

 ダウ平均は新型コロナの感染拡大で3月に1万8千ドル台まで急落していた。その後、コロナ危機が続くなかでも株価が回復してきたのは、業績好調なIT銘柄の貢献のほか、政策による下支えのおかげだ。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は未曽有の金融緩和に踏み切り、総資産は年初の4兆ドル規模から7兆ドル超に膨らんだ。米政府は現金給付を含めた計3兆ドル規模の経済対策で、景気の底割れを防いできた。

 米大統領選をめぐる混乱が不安要素だったが、民主党のバイデン前副大統領の勝利が固まったことで警戒感は後退し、そこにワクチン実用化への期待が重なった。米金融大手JPモルガンは、米大企業の株価水準が来年末までに25%程度上昇すると予測。投資家はリスクを取る姿勢を強めている。

 ただ、日米欧では秋が深まるとともにコロナ感染が猛威を振るっている。米国では1日あたりの新規感染者が過去1週間の平均で15万人に達した。2週間前に比べ8割も増え、過去最悪水準だ。1日あたりの死者も同1千人を超すなど「国難」レベルの危機が続いており、再び金融市場が動揺する可能性もある。

 ワクチンが広く接種されるのは、早くとも来年半ばになるとの見方がある。米政府による経済支援は、すでに大半が期限切れとなった。米投資会社幹部は「米経済の柱である個人消費が、ワクチン普及まで持ちこたえられるかが心配だ」と語る。バイデン氏が大統領に就任する来年1月までに、米議会与野党が追加支援策で合意できるのかに市場は注目している。(ニューヨーク=江渕崇)