勝見壮史
ゴールキーパー(GK)が日本サッカーの弱点と言われた時代は、もう終わった。オーストリアで活動中の日本代表でも、本場欧州の舞台でプレーする選手たちが1枠を争う激戦のポジションとなっている。世界基準の素質を秘めたシュミット・ダニエル(28)は正GK候補の一人だ。13日のパナマ戦を経て17日に迎えるメキシコ戦(日本時間18日午前5時開始)は、来年3月に再開予定の2022年ワールドカップ(W杯)カタール大会アジア2次予選に向けて、最後の強化試合となる。(勝見壮史)
まるで、フィールド選手のような動きだった。
10月のコートジボワール戦の後半12分。自陣ゴール前にいたシュミットは、DF吉田麻也が出したバックパスを右側から受けた。転がる球を猛然と追いかけてきた相手FWの圧力にも、動じない。左足で球を止め、すぐ右足で蹴る。速く、正確に転がして相手の間を抜き、20メートル超の縦パスをMF遠藤航に通した。敵陣深く攻め込む起点になった。
自陣からの長いパスが目立った4日前のカメルーン戦。シュミットは控えだった。「後ろからしっかりパスをつないでいこうとミーティングでも話していた。そういうところで貢献したいと思っていた」
シュミットの特長は、まさに足でのボールの扱いのうまさだ。森保一監督の初陣となった18年9月の国際親善試合で、日本代表に26歳で初選出された。それ以降定着し、権田修一と正GKの座を争ってきた。
試合中は、「常に空いたスペースを探している」。最後方から見える景色は広い。マークが外れた味方にパスを出せれば、自身が攻撃の第一歩となれる。相手が前掛かりならば、敵陣に向かって大きく蹴り込んでカウンターを狙える。
広範囲に守れる背の高さに加え、1点を奪うための攻撃に関われるキックの技術。サッカーが進化する中で、GKに求められる役割は変わってきている。
米国人の父を持ち、身長197センチのシュミットは、そんな世界レベルの潮流に日本では誰よりも近い。だが、キャリアを本格的にスタートさせたのは高校生からと、むしろ遅い。小さな挫折がきっかけだった。
小学校からサッカーを始めたが…
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