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 介護保険で要支援と認定された人などが使う総合事業のサービスは、市区町村の裁量が大きいサービスです。このうち地域住民が主体となって提供するサービスなどは、使える人の範囲が来春から広がることになりました。現場の求めに応じた拡大ですが、将来への影響を懸念する声もあります。

地域のつながり保つため ルール緩和を望む声

 東京都世田谷区の「金曜倶楽部」は毎週金曜日、区内にある教会の集会室を借りて、体操や歌などのレクリエーションのほか、昼食をバイキング形式で提供している。「要支援1、2」と認定された高齢者らのなかで、参加を希望し、歩いて通える人がやってくる。1回の利用料は500円。「みそ汁が人気で、これを楽しみにしている利用者も多いんです」。代表の加納美津子さん(70)は笑顔でそう話す。

 金曜倶楽部が行っているのは「地域デイサービス」と呼ばれる区の事業。地域のボランティアが中心となってサービスを提供する事業だ。介護の資格がなくても関われるが、金曜倶楽部のメンバーの多くは介護福祉士の資格を持ち、介護現場で働いた経験がある。

 加納さんは「介護保険では介護度によって受けられるサービス量が異なったり、限度があったりなど制約を感じていた。総合事業であれば自由にできるのではないか」と、この活動を始めた。

 今はコロナ禍で活動を休止しているが、自発的に週に1度は利用者宅を回り、安否確認を兼ねて有料で昼食を届けている。

 厚生労働省は2015年度以降、要支援者向けのデイサービスと訪問介護を、介護保険の保険給付から「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」へ段階的に移した。給付は全国一律が基本だが、総合事業は市区町村の裁量が大きい。運営基準を市区町村が自ら決め、介護事業所に加え、地域ボランティアなど住民主体の団体に補助を出してサービスの担い手に位置づけることができる。

 ただ、厚労省が定めた大本のルールで、今は総合事業のサービスを使える人は要支援であることが原則。要介護1以上になると使えないことになっている。

 厚労省は今回、このルールを緩める。住民が主体となって提供する総合事業のサービスを使っていた人が、要介護になった時点で引き続きそのサービスの利用を望み、かつ、市区町村が認める場合は使えるようにすることが、主な内容だ。ただし、利用者が保険給付のサービスも選べる状態であることが前提。改正省令は10月22日に公布され、施行は来年4月の予定だ。

 今回のルール緩和は、介護に関する厚労省の検討会に参加した自治体から「地域でのつながりを継続することが重症化防止につながる」との意見が出されるなど、現行ルールの見直しを求める声が現場から上がったことを受けたものだ。

 加納さんも、世田谷区に対して見直しを求めていた。加納さんらの活動は本来要支援者を対象としているため、要介護状態になってからも通う場合、その人の分は区の補助対象外になるという事態に直面しているという。ただ、要介護状態になったが総合事業のサービスを使うかどうかは、「利用者の状況や希望に寄り添い、家族やケアマネジャーの了解が得られることが大前提です」(加納さん)。

「全ての要介護者を総合事業の対象」案に反対意見

 厚労省は検討段階では、総合事業を使える人の対象範囲をもっと広げることを考えていた。8月から9月にかけてパブリックコメントを募集した省令見直し案では、市区町村が認める場合は全ての要介護者を総合事業の対象とする、というものだった。

 だが、これに対して、介護にかかわる複数の市民団体が反対意見を表明した。

 介護を市民の視点で考える「市民福祉情報オフィス・ハスカップ」は10月1日、「要介護認定者の保険給付を受ける権利が保障されない」「総合事業サービスの運営は市区町村の判断に委ねられ、たとえ新型コロナなどの影響で事業所などが休業しても、保険給付と違って代わりの支援が保障されていない」などとして、省令改正に反対する要望書を田村憲久厚労相に提出した。

 公益社団法人「認知症の人と家族の会」も、「『制度の持続可能性』を名目に推し進められている介護給付費削減の流れに沿ったもの」だなどとして懸念を表明した。

 最終的に対象範囲の拡大は、住民主体によるサービスを引き続き利用する場合などに限る形となった。

 厚労省の担当者は「(厚労相の諮問機関である)社会保障審議会での意見をふまえ、介護保険の給付が受けられることを前提に、本人の希望を踏まえて選択肢を広げるための改正。給付を抑制する目的ではない」と説明する。

「給付受ける権利 保障されるのか」

 対象範囲の拡大は絞られたが、反対した人たちに懸念は残る。

 ハスカップ主宰の小竹雅子さんは「住民主体による支援や総合事業を継続して利用したい人を否定はしない」としつつ、「自治体の判断で総合事業の利用対象が広がっていけば、保険給付を受ける権利や質が保障されない」と危惧する。

 念頭にあるのは、総合事業の現状だ。

 厚労省の調査研究事業(19年…

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