かつて、動物園は「見せ物小屋」のような存在でした。いま、絶滅の危機に直面する動物たちを未来に残すため、「種の保存」に取り組む園が現れています。ですが、すべての種を残せるわけではなく、命は選別されているのが実情です。
どこまでいっても人間のエゴに過ぎないのか。長年にわたって動物の取材を続ける特別報道部の太田匡彦記者と考えます。朝日新聞ポッドキャストでお聞き下さい。主な内容は以下の通りです。
・動物園はノアの箱舟なのか
・爬虫(はちゅう)類の部屋に置かれた、あの動物
・「見せ物」のままでいいの?
・動物園とペット、共通する視点とは
音声の主な内容をテキストでも確認していただけます(音声の内容をそのまま書き起こしたものではありません)
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Q:立ち姿が人気になった「風太くん」でおなじみのレッサーパンダは、絶滅危惧種なんですね。
A:はい。立つか座るかではなく、絶滅するか否かの問題に直面しています。
東京の上野動物園は戦前からありますが、ほとんどの公営動物園は戦後の復興期にできています。全国の自治体が動物園を開いたのは、市民に動物を楽しんで見てもらうなど、福利厚生の目的が大きかったんです。なので、遊園地と併設している所も多かった。
Q:動物は「見せ物」だった?
A:そのものと言えるでしょう。ところが、野生動物の乱獲を禁止するワシントン条約が締結されて、海外から自由に動物が入ってこなくなった。環境破壊が進み、絶滅していく動物も増えます。そんななか、何のために動物を動物園に置いておくのか。
命が大切だと言いながら見せ物にしているだけでは、理屈が立たなくなってきます。そこで動物園が存在意義として見いだしたのが、「種の保存」でした。
なかでもレッサーパンダは、国内で「種の保存」の取り組みがうまくいっている事例です。
Q:うまくいっていない事例もあるんですか?
A:国内に個体数が少なく、うまく増やせないだろうと思われる動物もいます。また、海外から入ってきにくい動物も、血統の多様性の観点から難しいだろうと言われています。
動物もいずれは死にます。でも、「死んでいなくなりました」では、動物園は立ち行かない。だから自給自足で展示する動物を維持していこうという側面もあります。
Q:水族館では多くのショーをやっています。「見せ物」の側面が強いのでは?
A:動物園はまだ頑張っていると率直に思います。追い込み漁をしている和歌山県太地町からイルカを入手していることが問題視されたとき、イルカの繁殖ができないからだと主張する水族館がありました。ですが、欧米ではできています。
動物園の方は、今さらライオンをアフリカから連れてくるようなことはせず、自分たちで繁殖技術を培い、維持しようとしている。動物へのスタンスの差は大きく感じました。
たとえば、アシカは動物園にも水族館にもいます。動物園はアシカを繁殖させていますが、何頭も飼えないので「余剰」になってしまう。でも、困らないんです。水族館がアシカを出してくれるのを待っているから。
水族館はアシカにショーをさせ…
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朝日新聞社会部