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 新型コロナウイルス下での雇用維持策として、企業間で従業員の出向を促す国の事業が不調だ。コロナで仕事が減り人手過多となった企業から人手不足の企業に出向させる狙いで、7月から埼玉県内で先行的にスタートさせたが、現在までの実績はゼロ。送り出す企業側が二の足を踏むなどして思うように進んでいない。

 事業は5月に県や国、経済界のメンバーで立ち上げた「強い経済の構築に向けた埼玉県戦略会議」で優先的に取り組む雇用対策の一つとされ、スタートした。関東経済産業局が「人材シェアマッチング事業」として主導し、もともと中小企業の人材確保を支援するために確保していた予算の一部を活用することにした。

 同局は県内企業への状況調査をしつつ、7月には専用サイトを開設。現在までに従業員を送り出したい企業26社、受け入れたい企業165社が集まり、中小企業診断士や人材コンサルタント計6人がマッチングに当たった。だが、実際に出向できた人はいないという。

 ネックの一つは、送り出す側に人材流出への不安があることだ。受け入れを希望する側には新型コロナ以前から慢性的に人手が不足している企業も多く、送り出した従業員が「行ったきり」にならないか不安を口にする経営者がいるという。

 また、仕事内容の違いから、従業員本人が出向に消極的なことも一因だ。今回の事業でも、企業間では合意ができたのに、送り出す企業側の従業員が手を上げずに不成立となったケースがあった。法的には、出向は従業員の同意を得ることが望ましいとされ、企業が一方的に命じられない。

 県内では新型コロナの影響で従業員解雇などを検討する事業所が累計約2千に上るという。同局は先月、専用サイトをリニューアルし、マッチング対象となる企業の範囲を埼玉を含む1都10県に拡大。「送る側、受ける側で信頼関係を築き、歩み寄れるような工夫もしていきたい」としている。(釆沢嘉高)

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