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 「核のごみ(原発から出る高レベル放射性廃棄物)」の最終処分場を巡り、国の選定プロセスの第1段階「文献調査」が動き出す。17日、梶山弘志経産相が、選定事業を行う原子力発電環境整備機構(NUMO)に認可を出した。NUMOは今後、2町村での「対話活動」で理解を深めたい考えだが、寿都町では反対派が町長のリコール(解職請求)を検討し、鈴木直道知事も道の「核抜き」条例を盾に処分場への反対姿勢を変えていない。(伊沢健司、斎藤徹、佐久間泰雄)

 寿都町の片岡春雄町長は17日夕の帰宅後、町の担当職員からメールで、NUMOが経産相の認可を受け、文献調査の計画書を公表したとの報告を受けた。取材に対し、「後日、NUMOと会ってからコメントを出したい」と述べた。面会の日程は未定という。NUMOは今後の文献調査で、地域住民と議論する「対話の場」を重視する方針で、片岡町長は「(NUMOと)同じ考えだ」と語った。

 神恵内村の高橋昌幸村長は取材に「コメントを見てほしい」とだけ答えた。その後、「文献調査実施にあたっては、村が受諾の際に求めた三つの事項をしっかり順守するよう、引き続き国やNUMOに要請していく」とのコメントを出した。具体的には、①知事や村長の意に反し(選定プロセスの第2段階の)概要調査に進まないこと②地域住民への正しい情報提供と中庸な対話活動の徹底を図ること③国が責任をもって風評被害対策を行うことを求めている。

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 寿都町で文献調査に反対する「子どもたちに核のゴミのない寿都を! 町民の会」の共同代表、吉野寿彦さん(60)は「住民の心が置き去りにされている」と憤る。反対の声が根強いにもかかわらず、片岡町長は応募への動きを続けた。町民の会は応募の賛否を問う住民投票条例の制定を求めて直接請求を行ったが、今月13日の臨時町議会で条例案は否決された。町議会ではこの条例案審議以外に公開での議論はほとんどなかった。

 吉野さんは「NUMOとの対話は拒まないが、文献調査に絶対反対の立場は変わらない。勉強会をしながら戦っていきたい」と話した。一部の町民の間では、片岡町長のリコールを模索する動きもある。

 文献調査に賛成の声が目立っていた神恵内村では歓迎の声が出た。商工会長として文献調査への応募検討を求める請願を出した上田道博村議(68)は、認可について「ありがたいことだ。文献調査を足がかりに、村に仕事と人を増やし経済を回していきたい」と話した。村社会福祉協議会長の五十嵐浩二さん(79)は「調査で大勢の人が入ってくることで、村の商店も潤うのではないか」と期待する。

 一方、村中心部で食料品店を経営する岡田順司さん(38)は、文献調査には賛成の立場だが、「調査開始後も住民には丁寧な説明をしてほしい。開かれた場で議論を尽くすことが村のためにもなる」と話し、「村民の同意がなければ概要調査には進まないということは、絶対に守ってほしい」と念押しした。

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 経産相の認可により、2町村で文献調査が実施されることになったことを受け、北海道の鈴木直道知事はコメントを公表。2町村には、核のごみを「受け入れがたい」とする道条例の順守を求めてきたとし、「文献調査が開始されることになったが、基本的な考えは変わらない」とした。そのうえで、概要調査へ移行する際は「条例の趣旨を踏まえ、現時点では反対の意見を述べる」「両町村とは引き続き対話を重ねていく」とした。

 鈴木知事は8月に寿都町で問題が明らかになって以降、一貫して道条例を理由に2町村の文献調査応募に反対する姿勢を示してきた。しかし知事には文献調査への応募を止める権限はなく、2町村では知事の発言にかかわらず、応募検討の動きが続いた。知事の発言自体も、国の選定プロセスを「札束でほおをはたくよう」と強く批判した当初からは徐々にトーンダウンした。

 道内では他の自治体でも処分場に関心を寄せる動きがある。知事はこの日のコメントで「道内全ての自治体に条例を順守していただきたい」と強調したが、2町村での調査の行方と共に、今後は他の自治体の動向にも神経をとがらせることになりそうだ。

「核のごみ」を巡る道内の動き

【8月】

13日 寿都町の片岡春雄町長が国の最終処分場選定プロセスの第1段階「文献調査」への応募検討を表明

18日 鈴木直道知事が寿都町の動きを批判。国の選定プロセスは「札束でほおをはたくようなやり方」と言及

【9月】

3日 鈴木知事が寿都町の片岡町長と会談し、応募への反対姿勢を伝える

10日 寿都町で最大規模の住民説明会。町長への批判相次ぐ

11日 神恵内村商工会が文献調査への応募検討を求める請願を村議会に出したことが判明

16日 神恵内村議会総務経済委員会が請願を継続審査に

26~30日 神恵内村で国などが住民説明会

29日 寿都町で国なども出席した住民説明会。町長への批判続く

【10月】

2日 神恵内村議会総務経済委で請願を再び審議

5日 寿都町が産業団体に説明

7日 鈴木知事が神恵内村の高橋昌幸村長と会談し、応募への反対姿勢を伝える

8日 寿都町議会で全員協議会を開催。片岡町長が記者会見し文献調査への応募を表明。神恵内村議会が請願を賛成多数で採択

9日 国が神恵内村の高橋村長に文献調査実施の申し入れ。高橋村長は受諾。寿都町の片岡町長が原子力発電環境整備機構(NUMO)に文献調査の応募手続き

11日 神恵内村の高橋村長が文献調査申し入れ受諾経緯を説明する住民報告会を開催

15日 NUMOが寿都町に、文献調査実施見込みを回答。神恵内村が文献調査実施の文書を経産相に郵送

23日 寿都町の反対派住民が文献調査応募の賛否について問う住民投票条例の制定を求める直接請求

【11月】

2日 NUMOが寿都町と神恵内村での文献調査事業計画実施を経産相に申請

3日 寿都町で反対派住民主催の小泉純一郎元首相の講演会。文献調査の是非には触れず

11日 寿都町議会で反対派住民が提出した住民投票条例案が審議入り。片岡町長は「住民投票は不必要」との意見書を添付

13日 寿都町議会で住民投票条例案が反対多数で否決

17日 経産相が寿都町、神恵内村での文献調査実施を認可

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