拡大する写真・図版笹を食べるジャイアントパンダのシャンシャン=2020年6月23日午前9時55分、東京都台東区、西畑志朗撮影

[PR]

 東京・上野動物園で2017年に生まれたジャイアントパンダのシャンシャンが、中国に渡る日が近づいてきた。すくすく育った3年あまりの日々。一般公開の初日の撮影に臨み、「あの一枚」を撮った朝日新聞映像報道部の長島一浩(かずひろ)カメラマン(37)に撮影秘話を聞いた。

 上野動物園に向かったのは、シャンシャンの誕生から半年が過ぎた17年12月19日。一般公開の初日とあって、46倍の倍率をくぐり抜けた1400人が駆けつけていた。来園者の邪魔にならないよう、観覧通路には1社分だけのスペースが設けられた。撮影後に各報道機関に写真を提供する「代表撮影」のカメラマンという大役を担った。

拡大する写真・図版レンズが並ぶ機材庫に立つ長島一浩さん=2020年11月13日、東京都中央区の朝日新聞社

 スポーツ撮影の経験が豊富で、オリンピックやサッカーW杯の名場面にもたびたび立ち会ってきたが、動物を撮るのはなんと初めて。パンダと対面した経験もなかった。

シャンシャンの3年あまりの日々を収めた写真集「ずっとだいすきシャンシャン」(日本パンダ保護協会・編、朝日新聞出版刊)を抽選で10人にプレゼントします。詳細は記事の末尾に。

初めてのパンダ撮影、現れたシャンシャンは

 与えられた撮影時間は午前9時45分から1時間。ガラス越しの室内運動場に向かってカメラを構え、じっと待った。だが、シャンシャンと母親のシンシンは十数メートル離れた奥の場所で過ごしており、カメラを構える位置に移動して来る気配はなかった。

 5分、10分、15分と時間が過ぎていく。「このままだと何も撮れないかも……」。夕刊の締め切り時間も迫りつつあった。焦りを募らせたころ、シャンシャンがおぼつかない足取りで撮影ポイントまで出てきた。一挙手一投足を見逃すまいと、夢中でシャッターを押し続けた。シャンシャンは水場で遊んだり、ササを口に入れたり。間もなく母親も現れ、親子で背中をくっつけ合う姿も見られた。

 仲むつまじく過ごしていたが、5分ほどすると、母親は再び奥へ戻るそぶりを見せた。シャンシャンも後に続くだろう……と思ったが、遊びに夢中で母親がいなくなったことに気づいていないようだった。しばらくすると、辺りをキョロキョロと見渡し、「あれー、ママどこに行ったの?」とでも言いたそうな表情を見せたが、遊び続けたかったのか、捜し続けることはすぐに断念。水遊びを続けた。

 母親も母親で、ついてくると思った子どもがいないことに気づくと、シャンシャンの方へきびすを返してきた。すると、「早く来なさい」とでも言うように、頭のてっぺんをくわえて引きずり始めた。シャンシャンは体をくねらせて抵抗するも、当時の体重はまだ12キロ。120キロの母親にかなうはずもなく、そのまま視界から消えてしまった。

拡大する写真・図版一般公開で、母親に引きずられるシャンシャン=2017年12月19日午前10時16分、東京都台東区の上野動物園、長島一浩撮影

 この瞬間を捉えた写真は、すぐに各社に配信され、各紙の夕刊や朝刊を飾った。朝日新聞の1面も「母親に引きずられるシャンシャン」だった。愛くるしい姿をみせる写真が複数あるなか、なぜこれが選ばれたのか。

 「構図が面白いし、意外性もあるからでしょう」。長島カメラマンは、想定外の出来事が起きた時にこそ、本質がみえると言う。「想像の枠に入りきらない写真が求められるのは、動物もスポーツも同じです」

 この写真は、朝日新聞出版が18年に出版した第1弾の写真集「あそぼ!シャンシャン」の表紙にも採用された。編集者の海田(かいでん)文(あや)さんは選んだ理由をこう語った。「長島さんはかわいい写真を撮ることより、動的な被写体の表情や動作を瞬間で切り取ることに集中している。動物写真なんですが、報道写真でもあるという気がします」。その上で、こう付け加える。「一瞬を切り取っているからこそ、この次はどうなるんだろうと空想してしまう。余白を読むような感覚で写真集を楽しんでもらえたら」(西村奈緒美)

動物撮影のコツ

 動き回る動物をうまく撮影するにはどうしたらいいのか。長島さんは「レンズから目を離さず、ピントを合わせて辛抱強く追い続けることが大切です。動いたと思ったらシャッターをひたすら押す。これを繰り返すしかありません」と話す。いつもより長めのレンズを使い、被写体を大きく写そうとすると、より気づきがあるとも言う。「撮影した写真を見直した時、面白いなと思う表情や動きが映っていれば、その感性を大切にして下さい」

拡大する写真・図版遠くも撮影可能な100―400ミリのズームレンズ(右)と、広い範囲が撮れる24―70ミリのワイドレンズのカメラ=2020年11月13日、東京都中央区の朝日新聞社

写真集プレゼントします

 シャンシャンが上野動物園で過ごした3年あまりの日々を収めた写真集「ずっとだいすきシャンシャン」(日本パンダ保護協会・編)が20日、朝日新聞出版から発売されます。誕生直後の姿や母親に甘える姿、独り立ちしたちょっとたくましい姿など、多様な表情を朝日新聞映像報道部が撮影した写真を中心に振り返ります。父親のリーリーと母親のシンシンの幼少期の写真も盛り込まれています。

拡大する写真・図版「ずっとだいすきシャンシャン」の表紙

 ハードカバー96ページ、税込み1870円。書店やASA(朝日新聞販売所)、朝日新聞出版のHPなどでお求めいただけます。この本を抽選で10人にプレゼントします。締め切りは12月15日で、朝日新聞デジタル会員の方が対象です(無料でどなたでもご登録いただけます)。応募ページ(http://t.asahi.com/panda別ウインドウで開きます)からご応募ください。

 第1弾の写真集「あそぼ!シャンシャン」も発売中です。

【動画】上野動物園のジャイアントパンダ、シャンシャンの返還期限が迫っている。福田豊園長が思いを語った=東京動物園協会提供