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 ベトナム戦争の従軍取材や釣り紀行で知られ、今年生誕90年を迎えた作家、開高健(1930~89)が最晩年に、出身地の大阪市で開いた講演を記録した原稿用紙が確認された。著作権を管理する開高健記念会には、この講演の記録は残っておらず、全集にも収録されていない。晩年の姿を伝える貴重な資料として、来月、同市内の展覧会で公開される。

 講演は開高が亡くなる11カ月前の89年1月、教職員の研修などを担う財団「大阪市教員会館」に招かれ、「アジアを歩くと……」という題で語ったもの。

 「開高健読書会」を主宰する吉村直樹さん(74)=同市東住吉区=によると、知人の元教員が今年夏、同財団の資料を整理していたところ、講演の内容を記した400字詰め原稿用紙約50枚が見つかったという。

 開高が紛争地や発展途上国を取材した経験から、「人間は大地、地べたに近い生活をしているほど人が良い」「(善は)ありふれているというので見逃がされてしまう」などと語った言葉が記録されている。「小説は無益であるからこそ、貴重である。何もかもが、有効であり、有益であったならば、この世はもう空中分解してしまう」と小説観も披露している。

 講演の録音を文字に起こしたものに、開高とみられる字で、語句の修正の指示が書き込まれている。同財団がこの講演などを小冊子「隣国とのふれあいを探る その4」にまとめて発行する際に、開高が内容を確認した原稿用紙とみられる。小冊子は大阪府立図書館が所蔵している。

 開高健記念会の永山義高理事長は「年譜にはこの講演の記録がなく、初めて知った。生前最後の講演の可能性もある。すでに(がんで)体調がよくなかった時期で、大阪を訪れたのは、出身地への思い入れがあったのではないか」としている。

 講演録の原稿用紙などを展示する「開高健展」(開高健関西悠々会主催)が12月4~9日、同市東住吉区にある須田画廊で開かれる。問い合わせは吉村さん(090・8750・4961)へ。(上原佳久)

■開高健の講演「アジアを歩くと……」から

 「私は小説家なのですが、去年…

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