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 昨年11月上旬、自宅で探し物をしていた山田早苗さん(55)は、1枚の手紙を見つけた。

 7年前にがんで亡くなった夫・尚さんが書いたものだ。

 「早苗さま 一生のお願い どうしても、頼みたいことがあります! 100万円下さい!! もしくは、貸して下さい」

 受け取ったのは2011年になってすぐのころ。胃の3分の2を摘出した尚さんが、中古でホンダ車「NSX」を買って約3年が経っていた。

 がんとわかってから、早苗さんに対して「僕には時間がない」と言うようになり、発売直後から憧れていたNSXを、貯金をはたいて買った。

 もともと車好きだったが、木工会社を経営していたため取引先を気にして、それまで控えめな車に乗っていた。

 手紙に出てくる100万円は、愛車をドレスアップするための費用だそうで、理由をこう書いてあった。

 「今、やりたい事をやっておかないと後悔しそうで…… お金をためて1個ずつでは、もう時間がありません。ほぼ完成させた車に4年ぐらい乗りたいです!」

19歳で結婚

 2人が出会ったのは1983年。早苗さんは18歳だった。

 友人の紹介で会うことになったが、9歳年上の尚さんを見て「何でこんな人と会わなきゃいけないの」と思った。

 後日デートすることになったが、その日になって早苗さんが盲腸で入院。

 看護師にお願いして「今日は行けなくなった」と尚さんに電話してもらうと、すぐにバイクで病院に駆けつけてくれた。

 これがきっかけでつき合うようになり、翌年に結婚。

 尚さんが親から引き継いだ愛知県内の木工会社で、早苗さんも働くようになった。

てっきり仕事の書類だと思って

 購入したNSXは1991年式の黒。人気の赤いボディーを探したが条件が合わなかった。

 低い車高で平べったく、黒光りしている車を見て「ゴキブリみたい」と思った。

 助手席に乗って走り出すと、地面すれすれのような低い目線と、スピードにのった時の風を切る感覚が気持ちよかった。

 手紙を渡されたのは、がんの再…

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