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 ホンダは19日、軽自動車「N-ONE(ワン)」を全面改良し、今月20日に販売開始すると発表した。2012年の初代発売以来、8年ぶりの刷新で2代目となる。軽自動車初となる前輪駆動(FF)ターボ車への6MT搭載で、スズキ・アルトワークスが先行する軽ホットハッチ市場のシェア奪取を目指す。

 N-ONEは、ホンダが展開する軽ラインナップ「N」シリーズの第3弾として12年11月に発売。同社の往年の名車「N360」をモチーフとした丸目2灯のヘッドライトが特徴的なトールワゴンだった。車高を低く抑え、スタイリッシュで愛らしいデザインを売りにしていたが、Nシリーズの実質的な看板モデルであるスーパーハイトワゴン「N-BOX(ボックス)」の躍進の陰で埋没。低迷したまま今年3月に販売を終了していた。

 新型のデザインは、先代からのキープコンセプト。LEDデイライト以外は、先代オーナーでないと違いが分からないぐらい変化に乏しい。一方でプラットフォームは全面刷新し、重量増の抑制と剛性の強化を両立。初代の美点であった、1クラス上の小型車に匹敵する質の高い乗り味に磨きをかけた。さらに、運転支援機能パッケージ「ホンダセンシング」や電動パーキングブレーキなどの先進装備も充実させている。

 販売台数が3年連続国内トップのN-BOXが盤石な一方で、他カテゴリーでのベストセラー育成による販売構成比率の偏り解消が課題となっているホンダ。量販カテゴリーの軽トールワゴン市場でどこまで存在感を示せるかが焦点となる。

 価格は消費税込み159万9400~202万2900円。発売は今月20日で、月間2千台の販売を計画している。

【短評】小気味良い6MT 小さな車体を自在に操るプリミティブな快感

 19日に発表された新型N-ONEを、東京・南青山のホンダ本社周辺で公道試乗した。

 試乗グレードは「RS」。この、初代シビック以来の伝統のスポーティーグレードに6MT仕様が用意されたのが、自動車ファンにとって最大のトピックだろう。記者も6MT仕様を選んで出来栄えを確かめた。

 6MT仕様も、スタンダードなCVT仕様と同じインパネシフト。ハンドルから近い位置にシフトノブがあるため、慌ただしいシフトチェンジも苦にならない。ミッション自体は、本格ミッドシップスポーツの「S660」や商用向けの「N-VAN(バン)」に搭載されているものの流用だ。ようやく、乗用のFFトールワゴンという実用性十分の量販モデルで、快活な6MTを楽しめるようになった。現時点で軽に6MTを積むのはホンダだけで、ターボ付きFFとしては全社通じて軽自動車初となる。

 乗り出した瞬間からボディーのガッシリ感が伝わる。サスペンションがちゃんと動き、路面の段差の突き上げをうまくいなす。軽自動車には珍しく、前後のサス両方にケチらずスタビライザーを備えているのも効いている。インテリアの樹脂素材や色づかいの質感も高く、ゆっくり流していると上質感に加え重厚感すら漂う。このあたりは、スズキやダイハツ工業に勝る現行N-BOXの美点をうまく引き継いでいる。

 車重は840キロと先代とほぼ変わらず、けっして軽くない。ホンダの開発責任者によると、軽量な新プラットフォームとの差し引き分の重量は、吸音材など質感の維持向上のための部材に振ったという。ドアの開け閉めでは、軽自動車離れした重い音がする。

 ダイレクト感のあるミッションはクロスレシオで、小柄な車体をグイグイ引っ張る。低回転からモリモリとトルクが湧くターボは、電動ウエストゲート導入のおかげでアクセル開閉に対するレスポンスも良い。

 短時間の試乗でも、完成度の高さが伝わった6MT仕様のRS。ライバルは、こちらも軽ホットハッチの伝統ブランドであるスズキのアルトワークスとなる。700キロに満たない車重と5MTの組み合わせで、実に軽快に俊敏に走るのがワークスの美点だ。価格も150万円台と極めて割安。この点では、かさむ車重や200万円に迫る車両本体価格など、手ごろな軽スポーツとしてのRSの優位性は乏しい。

 だが、ロードノイズの大きさや乗り心地の硬さ、内装の質感の低さなど、軽快感を優先させて割り切った設計のワークスは粗(あら)も目立つ。スズキは年内にもアルトを全面改良するとみられ、追って新型ワークスも投入されるはずだ。元祖・軽ホットハッチの意地で、こちらも高い完成度が予想される。どちらも切磋琢磨(せっさたくま)しながら、熟成と進化を続けてほしい。

 N-BOXの圧倒的な売れ行きと各メーカーこぞっての競合車種の積極投入で、すっかりスーパーハイトワゴン一辺倒になってしまった軽マーケット。使い勝手最優先以外の多様な価値観と選択肢の充実が、都市部での登録車からの乗り換えをうながし、飽和気味の軽乗用車市場のさらなる拡大のカギとなる。看板モデルであるN-BOX開発のノウハウを惜しまず注いだ新型N-ONEで、N-BOXとは違う魅力的な選択肢をホンダは自ら示してくれた。その心意気に拍手を送るとともに、次期型アルトワークスを始めとした他メーカーの競合車種も充実することで、操る楽しさに満ちた軽ホットハッチの世界がいっそう広がるのを期待したい。(北林慎也)

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