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 高齢化が進む鹿児島県鹿屋市高須町で、乗り合い用の低速の電動式カートに住民たちを乗せて、隣町のコンビニエンスストアまで往復する実証実験が始まった。町内には生鮮食品を売る店がなく、高齢者の買い物支援の切り札になることを市は期待する。

 市内には路線バスなど公共交通網が貧弱な地区が多く、高齢化も進み、日常の買い物が困難な住民が増加傾向にあることが課題だ。

 高須町は市中心部から車で15~20分ほど離れた海岸沿いの地域。地元町内会によると、人口は約800人で65歳以上の高齢者が約6割。野菜や果物を売る食料品店が一軒もない。

 免許を返納した高齢者も多く、店や病院が集まる市中心部までの路線バスは1日に数本だけ。高齢者らは食料品を買うため親族の車に乗せてもらったり、数千円払ってタクシーを利用したりすることもあるという。高須町内会は高齢者の移動手段の確保を市に要望していた。

 実証実験に使用している電動式カートは、電動車の普及を進める広島市の民間業者から市が無償で借りたもので4人乗り。時速20キロ未満でゆっくりと走る。乗用車の運転免許を持った住民が交代で運転手を務め、野菜や果物が買える約2キロ離れた隣町のコンビニエンスストアまで坂道を上り下りして往復している。実験は4日に始まり26日まで。

 17日の実験で電動式カートに乗って買い物に出かけた山下ハルヨさん(79)は「遠くに買い物になかなか行けないから、便利で助かっています。みんなで乗るから話もできて楽しい」。町内会長の上原義史さん(59)は「ひきこもりがちだった高齢者が外に出るきっかけにもなっている。これを契機に電動式カートも含めた移動手段の導入を市に相談したい」と話した。

 市の担当者は「実験の結果や住民の意見を踏まえ、市内の高齢者の買い物支援にどのような交通手段の導入が可能か検討したい」と話した。

 実証実験に使われている電動式カートは「グリーンスローモビリティ」と呼ばれる低速電動車の一種。高齢者の移動手段などとして、国はグリーンスローモビリティの普及を推進している。九州では大分県や宮崎県で実証実験が行われたが、市によると、鹿児島県での実証実験は鹿屋市が初めてになるという。(稲野慎)