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 痩せこけた鬼のような姿が古来より厄よけのお札に使われてきた平安時代の高僧で、比叡山延暦寺の中興の祖・元三大師(がんざんだいし)良源(りょうげん)(912~985)が、コロナ禍の収束を願うシンボルとして各地で注目されている。東京都調布市の深大寺にある秘仏、元三大師像も来秋、上野で205年ぶりに出開帳(でかいちょう)される。

 良源は、第18代天台座主(ざす)で慈恵(じえ)大師と呼ばれるが、正月三日に死去したため俗称は元三大師。伝承では、ある夜、元三大師の前に疫病神が現れ、体に侵入。高熱を発したが法力で追い払った。「人々を救わねば」と瞑想(めいそう)に入ると、頭から角のようなものが伸び、鬼の姿に。大師は弟子に「この姿を版木に彫り、家々の戸口に貼るよう配りなさい」と命じたという。

 山形県南陽市の熊野大社では昨年末、大師を描いた神仏習合時代のお札の版木が見つかり、同大社はお札を復刻した。近くの酒造会社はこれをラベルにあしらい、6月に純米吟醸酒を売り出した。大師生誕の地に建立されたと伝わる滋賀県長浜市の玉泉(ぎょくせん)寺も、3月にお札を復刻。全国から注文が相次ぎ、約2万枚を配布した。

 東近江市の百済(ひゃくさい)寺や農家、酒造会社が444年ぶりに復活させ、2年前から販売を始めた日本酒「百済寺樽(たる)」は、9月から同寺の元三大師のお札を縮小したタグを付けて販売している。

 元三大師信仰は全国に広がっており、叡山学院(大津市)が1984年に編纂(へんさん)した本では、東京の寛永寺開山堂や埼玉の川越大師喜多院など、ゆかりの寺は当時298カ所。

 深大(じんだい)寺には、高さ約2メートルと、僧形の古像としては日本最大の元三大師像(木造慈恵大師坐像)がある。50年に一度の本開帳、25年に一度の中開帳をしてきた。3月に都の有形文化財に指定されたのを受け、今年10年ぶりの特別開帳を予定していたが、コロナ禍で断念した。しかし、同寺によると来秋、東京・上野の東京国立博物館で公開される。寺の外に出張する出開帳は、両国・回向院への出開帳以来205年ぶりという。

 調布市郷土博物館でも12月13日まで「深大寺の元三大師」を開催中で、江戸時代の御開帳に関する文書や秋田、京都など13寺社のお札などを展示している。

 深大寺学芸員の菱沼沙織さんは、「コロナ禍の収束を願い、御開帳に期待している人も多いようだ。文化財に親しんでもらえる機会になる」と話している。(石渡伸治)