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 小中学生に1人に1台のタブレット端末を配る国の「GIGAスクール構想」で、奈良市は9月中に約2万2千人の生徒全員に端末を配り終えた。全国に先駆けて、タブレット端末を「新しい筆記用具」として使う授業が広がっている。

 「では、タブレットを出して」。中学2年生の英語の授業が始まって10分後、富雄南中学校の池側瑞穂教諭は英語で呼びかけた。この日は発音についての授業。約30人の生徒はタブレット端末に向かって英文を音読し始めた。

 画面を見ると、端末の音声入力システムが反応し「He will visit Nara」など次々と英文が表示されていた。間違った発音だと、英文が正しく入力されないため、生徒の発音練習に適しているという。

 宿題もタブレット端末上で出す。生徒は家に端末を持ち帰り、英文和訳の問題を解く。提出ボタンを押せば、答案はすぐに送信される。後日、池側教諭が採点やコメントをつけてオンライン上で返却するという。

 奈良市教育委員会によると、このようなタブレット端末を使った授業が、市内の全小中学校で始まっている。国の「GIGAスクール構想」で2023年度までにタブレット端末の配布を終える予定だったが、今春のコロナ禍の休校でオンライン授業を始めたことをきっかけに計画が前倒しになった。

 タブレット端末は社会や理科の調べ学習に使ったり、算数のドリルを解いたりと、使い方はさまざま。どう使うかは学校や教師に委ねられ、市教委は授業で積極的に使うことを勧めている。今年度内には教師向けのオンライン研修を約200講座以上を準備している。

 市教委学校教育課の谷正友係長は「生徒全員が同じペースで同じ内容を学ぶ、そんな当たり前だった授業の形が変わると思います」と話す。AIによる学習ドリルを使えは、苦手分野や学習状況に合った問題に、生徒はそれぞれのペースで取り組める。入院や不登校などで学校に来られない生徒のために、授業を動画撮影し、タブレットで見てもらうことにも取り組む。

 休み時間や部活動中にも、タブレット端末を使うことを市教委は勧めている。春日中学校のバスケットボール部ではプレーを動画撮影して、動きの修正などに使っているという。トラブルが起きないように、授業以外の使用は禁止にしている学校もある。

 一方、タブレット端末の導入で教師の負担が増えているという声が上がっている。ある学校の教師は「新しい授業の形を考えるのに、働く時間は更に延びている。研修を受けるにも学校での勤務時間内では間に合わず、帰宅してから家で受けている」と話す。

 市教職員組合の帰山春好(きやまはるよし)書記長は「現場の負担は大きい。機械に疎い年配の教師などをサポートする環境をもっとつくってほしい」と話している。(福岡龍一郎)

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