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 いまや大相撲界のトレンドになった「幕尻」が、またも土俵を沸かせた。

 22日に千秋楽を迎えた大相撲11月場所で、幕内の番付最下位・志摩ノ海が終盤まで優勝を争い、自己最多11勝を挙げて2度目の敢闘賞を獲得した。派手さはなく、どちらかと言えば“地味”な31歳が、愚直な取り口で勝ち星を重ねた。

 179センチ、160キロの体格は、幕内では平均的と言える。光ったのは代名詞の「おっつけ」。自身の脇を締め、横や下から相手の腕をあてがって封じる技術だ。特に今場所は決して頭を上げず、徹底したおっつけで勝機を見いだした。

 三重県志摩市出身。相撲の原形は、小学3年から通った地元の「志友館相撲道場」で培われた。元々は、まわしをつかむ四つ相撲だったが、館長の小林利博さん(72)らの勧めで、おっつけながら攻め立てる押し相撲を覚えた。

 今でも本人から助言を求められる小林さんは、躍進の要因を「諦めず粘っていく気持ちと、相撲のイメージやリズムが合っている。力みがなく、焦っていない」とみる。

 新入幕は29歳だった昨年5月の夏場所。関取まであと一歩に迫りながら、けがに泣かされた苦労人でもある。2012年夏場所の初土俵から1年余りで幕下上位にたどり着いたが、左ひざの靱帯(じんたい)断裂で序ノ口からの再出発を強いられた。

 そこから幕内の座を手にするまで約5年。けがの直後は実家で治療やリハビリを支えた母・浜口恵子さん(60)は「そばで見ていて声をかけるのも可哀想だった」と振り返る。「治るかどうか本人も不安だったと思うけど、毎日毎日、病院の先生に言われた通り、その時できるトレーニングとリハビリを繰り返していた」。取り口が表すように、まじめで素直な人柄が復活と成長を支えてきた。

 今年の土俵は一年を通して波乱が続いた。長い大相撲の歴史で1度しかなかった幕尻優勝が、初場所・7月場所と相次ぎ、秋場所では106年ぶりの新入幕優勝なるか、と注目を集めた。

 志摩ノ海は、明徳義塾高・近畿大の先輩で兄弟子でもある徳勝龍の幕尻優勝から大きな刺激を受けたという。パレードの旗手を務めた時には、祝福する思いの一方で「悔しいなという気持ちでずっと見ていた」。

 今場所の快挙達成はならなかったが、「自分の相撲を取れると勝てることが分かった」と大きな手応えを得た。大きく番付が上がる来場所へ向け、「もっとしつこく、粘っこく。上(位)に嫌がられるような相撲が出来るように稽古したい」と言った。(松本龍三郎)