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 「いろいろ悩むこともあったんですけど、自分で決断したことなので。今は前を向いている感じですかね」。退団発表の翌日、小窪哲也は詰めかけた報道陣に胸中を明かした。球団から打診された指導者への転身。しかし現役続行にこだわった。「考えても一番に出てくるのは、まだやりたいという思い。本当に後悔のないようにしたいなと思いました」。愚直で誠実な35歳。自分の気持ちに噓(うそ)はつけなかった。

 2007年、大学・社会人ドラフト3巡目で指名を受けた。1年目から98試合に出場。勝負強い打撃に加え、二塁、三塁、遊撃を守れるユーティリティープレーヤーとして欠かせない存在となった。2016年には選手会長に就任。野手陣と投手陣の橋渡し役を務め、25年ぶりの優勝を果たした。

 「パッと思い浮かぶのは優勝する前の年の最終戦で、勝てばCSに行ける戦いで勝てなかった試合。悔しいままオフに入って、選手同士いろいろ話し合った」。13年間で学んだ勝利への執念。目の前の1試合、1打席に全力で取り組んだ。プロの世界に導いてくれた球団には感謝しかない。それだけに決断は容易ではなかった。背中を押してくれたのは妻の言葉だ。「家族を優先するより自分を優先して。その方が家族のためになる」。迷いは消えた。

 カープの元トレーナーで、毎年オフの自主トレを共にする鈴川卓也さんはフェイスブックでエールを送る。「迷った時は困難な道を行く所がテツらしい。何があっても良いように、身体の準備だけはしておきます。今までもそうやって、ここまで来ましたから」

 例年とは違う練習環境に戸惑いながらも、トレーニングを続ける日々。「どれだけできるか分からないけど、可能性がある限り野球人生を目いっぱい頑張りたい」。不安はある。でも、全力で走ってきた。だから今は待とう。吉報が届くと信じて。(広島ホームテレビ・アナウンサー)

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