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 認知症の人にみられる症状には、もの忘れなどの中核症状と、心理面や行動上の混乱である周辺症状があります。周辺症状は「BPSD」とも呼ばれ、初期には不安や気分の沈みが多く見られ、中等度になるとかなりの割合で見られるのが被害妄想やもの盗られ妄想などの症状です。周囲の不適切な対応によって、当事者が不安定になるために出てくる場合も多いのですが、なかには脳の変化から出てくるものもあります。今回はコロナ禍で、そのような症状のひとつである「もの盗られ妄想」が出た人と家族のお話です。

 82歳になるアルツハイマー型認知症の女性、生島隆子さん(いくしま・たかこ:仮名)は、娘の葉子(ようこ:同)さんと二人暮らしをしています。葉子さんは夫と別れ、子どもがいなかったこともあり、6年前に実家に戻り母親のケアをしながらこれまでやってきました。もう一人、息子の修道(なおみち:同)さんは飛行機で1時間半かかる他県に在住で、故郷の大阪に戻ってくるのは年に3回が限度です。ほかに頼れる親戚もない隆子さんにとって娘の葉子さんは日々を送るうえで「かけがえのない人」なのです。

 ところが2020年1月に始まった新型コロナウイルス感染症の流行は、この親子の介護状況を全く変えてしまいました。残念なことに隆子さんが利用してきたデイサービスの職員がコロナ陽性になり、休業の後に再開したのですが、葉子さんがそのことからサービス利用について恐怖感にとらわれました。コロナウイルス感染は誰にでも起き得ることであり、デイサービスも注意していることはわかっているのに、どうしても「もし感染したら高齢の母は助からない」という思いが頭から離れず、4月以降、デイサービスを休んでいます。ケアマネジャーが感染予防に努めているデイサービスの姿を伝えましたが、葉子さんの恐怖感はとれませんでした。

グループホーム入所を提案

 そんな生活が続いた8月末、隆子さんの様子が変わりました。葉子さんに対して「私の財布のお金をとった」と訴え、大声でなじります。葉子さんも自分の対応がそのような症状を引き起こしているのだと思うと、常に母親に対しては「穏やかに、やさしく」接しようと努めました。介護の教科書にそう書いてあったからです。でも、限界がありました。母親の介護を中心にした生活を送ってきた自分が、泥棒扱いされることを考えると、この先の人生は真っ暗であるように感じました。

 ケアマネジャーも、もの忘れ外…

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