[PR]

 「東洋のハリウッド」と呼ばれた長瀬撮影所を現在の大阪府東大阪市に開設し、大ヒット映画を生み出した「帝国キネマ演芸」の創業から、今年で100年となる。映画のまちだった東大阪の歴史をひもとくイベントが地元で29日に開かれるが、すでに満席だ。

 東大阪市などによると、帝国キネマ演芸は1920年、山川吉太郎氏が設立。現在の東大阪市にあった小阪撮影所を買収し、23年度には無声映画や時代劇など約60作品を撮影した。長瀬川や周辺の寺社などがロケ地になったという。

 市国際観光室によると、28年には二つのかまぼこ形の屋根が並ぶ巨大な長瀬撮影所を開設。敷地面積は約3万3千平方メートルで「東洋のハリウッド」と呼ばれたという。そこで製作されたのが、空前の大ヒットとなった無声映画「何が彼女をそうさせたか」(鈴木重吉監督)だ。

 作品は、不幸な家庭に生まれた少女が曲芸団などを転々とした末、キリスト教施設に放火する悲劇の物語。プロレタリア文学が原作で、30年のキネマ旬報優秀映画第1位に選ばれた。

 だが、映画公開から約半年後に撮影所が焼失した。京都の太秦に移転したが、業績不振でまもなく同社は事実上の終わりを迎えたという。「何が彼女をそうさせたか」のフィルムも、長く行方不明となった。

 しかし、90年代前半、フィルムがロシアにあることが判明。山川氏の孫が日本に持ち帰り、大学教授らが復元に着手した。欠損部分を字幕で補うなどして、97年には京都の映画祭などで上映されたという。2008年には東大阪市で大々的に公開され、その後DVD化された。同室の朝田良輝さんは「撮影所の焼失、フィルムの消失、その後の発見と様々なストーリーがあって、興味深い」と言う。

 長瀬撮影所の跡地は宅地化が進み、その一角は現在、樟蔭学園の施設「樟徳館(しょうとくかん)」として、国の登録有形文化財になっている。撮影所当時の面影はほとんどないが、創業から100年の節目に向け、市や観光協会などは数年前から記念イベントの検討を始めた。新型コロナウイルスの影響もあったが、今年6月から準備を本格化させた。

 29日に開くイベントでは「何が彼女をそうさせたか」を上映、映画の復元に携わった元大阪芸術大教授の太田米男さんと、帝国キネマ創業者のひ孫・山川雅行さんが対談する予定。当時を振り返る要素も盛り込んだという。10月中旬に参加者を募集すると、わずか数日間で席が埋まった。

 朝田さんは「東大阪が映画のまちだったことはあまり知られていない。これからも帝国キネマの存在をPRしていきたい」と話す。作品のDVD(定価は税別4800円)は、紀伊国屋書店のオンラインストア(https://www.kinokuniya.co.jp/別ウインドウで開きます)で販売している。(山中由睦)

関連ニュース