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 ナラやカシといったブナ科の樹木を枯死させる「ナラ枯れ」の徳島県内の被害が今夏、前年比3倍の規模に急拡大している。被害が確認された市町村数はこれまで県南部や鳴門市など6だったが、今年は徳島市や県東部域にも広がり、16に増えた。県や自治体は今秋、連絡会議を結成するなど対策にのり出した。

 県東部農林水産局によると、今年9月末までに新たに被害が確認されたのは徳島、小松島、吉野川の3市、勝浦、上勝、神山、石井、板野、上板の6町、佐那河内村の計10市町村。

 徳島市は県都のシンボルの一つ、眉山でも枯れ木が目立つなど被害量は146立方メートル、以前から被害が出ていた鳴門市の161立方メートルに次ぐ規模に。小松島市は131立方メートルに及び、3番目に多かった。

 県内の被害総量は2018年の149立方メートルから19年は239立方メートルに増加。20年は769立方メートルで前年の3倍超に達した。

 「ナラ枯れ」の直接の原因は、昆虫のカシノナガキクイムシ(カシナガ)だ。

 カシナガは体長5ミリほどで雌の体内に特定の菌が蓄えられている。6~7月、前年にすみ着いた木から雄が別の木に穴を開けて侵入する。次に雌が穴に入ってカップルを作り、菌を持ち込む。

 菌は幼虫のエサになると同時に、樹木の水分を通す道管を破壊する。この「通水障害」で8月には紅葉のように木の葉が赤く変色し、木が枯れる。放置すれば枯死や倒木につながり、被害がさらに拡大する。

 これまでは本州の日本海側を中心に東北、近畿、北陸、中国地方で猛威をふるってきた。四国では香川県の小豆島や高知県の一部で確認されているが、近年、徳島県での被害が突出しているという。

 森林総合研究所四国支所(高知市)の佐藤重穂さんは「徳島県内では5年前ごろから県南部の太平洋沿岸3町で被害が起きていたが、徳島市など県東部まで北進したと考えられる」と話す。

 夏場の気温が高く、降水量が少ないと「ナラ枯れ」が発生しやすくなると言われ、気象条件が重なった可能性もあるという。

 被害の急拡大で倒木の増加や貴重な巨木・名木の枯死、景観への影響が懸念されている。

 連携して対処するため、県東部農林水産局を事務局に市町村関係部局や森林組合などで構成する連絡会議が設立された。10月に徳島市内であった初会合では、カシナガから樹木を守る方法が確認された。枯れ木を放置すると周辺にも被害が広がることから伐採や撤去の注意事項を共有した。

 会合では森林総研の佐藤さんが講演。里山の薪炭林が伐採されなくなり、ナラやカシなどが太い木を好むカシナガの標的になったと、被害拡大のメカニズムを説明した。佐藤さんは「人間の森林管理のあり方が変わったことから被害が起きた。いったん発生すると周囲に被害が及ぶ。対策を講じる必要がある」と指摘している。(雨宮徹)

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