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 不倫だ浮気だ二股だと、有名人の色恋沙汰が暴かれ、テレビから消えていく。「裏切られた側」の心情は察するが、ここまでつるし上げられ、社会から消されないといけないのか?

 平安時代、あまたの女性と関係をもった男、在原業平を小説化した作家、高樹のぶ子さん(74)に聞いた。(真野啓太)

拡大する写真・図版高樹のぶ子さん=金子淳撮影

 たかぎ・のぶこ 1946年、山口県生まれ。出版社勤務を経て80年、「その細き道」でデビュー。84年、「光抱く友よ」で戦後生まれの女性として初の芥川賞。芥川賞の選考委員を昨夏まで18年務めた。恋愛小説の名手として知られるが、近年、古典を題材にした創作に本格的に着手。2018年、文化功労者。福岡市在住。

 「のど、乾いたでしょう?」とお茶を勧めてくれた優しい声がうわずった。

 不倫への風当たりの強さに水を向けたときだ。

 「現代は恋の制約が一番多い時代ですよ。精神的なものまで社会の秩序やモラルにあてはめて、そこからはみ出した者には攻撃を加えるでしょ? 『文春砲』で。なんなんだ!と思うけどもね」

 怒っているのは週刊誌報道に対してではない。それを消費している世の中に対してだ。日本では平安時代から色恋話が好まれ、和歌や物語に昇華してきたが、今はどこかいびつだ。

 「たとえば男の人が浮気をしたとして、文句を言う権利があるのは奥さんと家族だけ。正義の仮面をつけて、どぶに落ちた猫をみんなで踏んづけて、留飲を下げるというのは、業平があこがれられてきたことと真反対の状況ですよ」

1千年読まれてきた色恋話

 在原業平は平安時代に書かれた「伊勢物語」の主人公とされる人物だ。帝の后(きさき)となるべき女性と駆け落ちしたり、神に仕える女性に近づいたり。現代なら「けしからん浮気者」と糾弾されそうな色恋沙汰を重ねてきた。だがバッシングされるどころか、1千年も読み継がれてきた。

拡大する写真・図版「伊勢物語」(岩波書店)

 高樹さんはそんな古典を現代語訳ではなく、小説として編み直した。「小説伊勢物語 業平」(日本経済新聞出版)だ。

 「現代の価値観で浮気男と断罪してはいけない。業平は雅(みやび)な男だったんです」

 雅とは。

 辞書では「優美」などと説明さ…

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