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 全国各地でご当地の「クラフトジン」を作る動きが広がっている。日本で初めてジンが作られたとされる長崎では、発祥当時の味を再現したジンが販売され、人気を集めつつある。世界で広がるブームが日本にも入ってきている。

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 ウイスキーのような琥珀(こはく)色。トニックウォーターで割り、ジントニックにして飲むと口の中に甘い香りと味わいが広がる。長崎県諫早市の日本酒の蔵元「杵(き)の川」が製造するクラフトジン「伝之進(でんのしん) 1812」。2019年6月の販売開始以降、好調な滑り出しを見せている。

 社長の瀬頭信介さん(50)は「ほかのジンと比べ、甘さが強いのが特徴」と語る。

 ジンは大麦やライ麦など穀物を原料とし、ボタニカル(草根木皮)で香りづけして作る蒸留酒だ。伝之進は、ベースとなる焼酎などに通常の3倍のジュニパーベリー(針葉樹ネズの実)、長崎名物カステラに使われるザラメ糖をつけ込んで作られる。

 ジンは江戸時代、出島に持ち込まれたとされる。

 日本人の手で初めて作られたとされるのは、江戸時代後期。1803年に出島のオランダ商館長に就任したドゥーフの「日本回想録」によると、当時のオランダはフランスの皇帝ナポレオンに占領されたうえ、英国とも戦争に。1809年から貿易品や生活必需品を乗せた船が長崎に来なくなり、出島では必要な物資が不足し始めていた。

 当時の長崎奉行の目付、茂(しげ)伝之進が1812年、「オランダ商館の人たちに快適に過ごしてもらおうと」と腐心し、日本人の手で初めてジンを蒸留したという。ドゥーフはその味に満足しながらも、ネズの実の樹脂の味を取り除くことはできず、甘いものだったという。

 この味を復刻、再現したのが、杵の川のジンだ。毎月100本ほどの注文が入り、東京や大阪、長崎県内の酒屋に出荷され、各地のバーなどで提供されている。瀬頭社長は「新たなチャレンジをすることで、日本酒づくりにもいかせる」と手応えを話す。

 伝之進は2970円(税込み)。問い合わせは杵の川(0957・22・5600)へ。(米田悠一郎)

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 ご当地のクラフトジンは県内のほか、全国にも広がっている。

 佐世保市の日本酒の蔵元「梅ケ枝酒造」では、日本酒をベースに県産フルーツなどで香り付けをして作る「よきつき令月」を19年10月から販売。京都や広島など、全国各地の酒造会社でもご当地ジンが16年ごろから作られ始め、広がってきている。

 洋酒に詳しい酒文化研究所(東京)の山田聡昭さん(57)によると、08年、英国で200年ぶりにジンの蒸留所ができ、ブームが世界に広がった。

 その流れを受け、日本でも焼酎や日本酒メーカーがクラフトジンに参入。ウイスキーと比べ、蒸留にかかる時間も短いうえ、香りづけに地域の特産品を加えやすく、参入する企業が相次いでいるという。

 山田さんは「世界のコンテストで高い評価を得るような質の高いものが出てくるか。今後の展開にも期待」と話した。

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