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 ICT(情報通信技術)などを活用したスマート農業。観測データに基づき、ハウス内を作物の生育に最適な状態に自動で近づけ、増収や品質向上を図る環境制御システムが注目されるなか、和歌山県内では、若手農家らが投資を抑え、自作で工夫しながら、施設をバージョンアップして導入に取り組んでいる。

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 岩出市の農家、西歩さん(40)。元IT会社勤務で、10年前に新規就農した。環境制御システムの導入に取り組み始めたのは、5年ほど前。安くて高性能な超小型コンピューターの普及やソフト開発が進み、自作によるシステム導入に挑戦する人が増えていたことが背景にあった。ネット通販などで、ハウスの屋根を開け閉めするためのモーターや灌水(かんすい)用チューブなど資材を購入。可能な限り自作し、もともと使っていた一般的なハウスをバージョンアップさせた。

 ハウス内外の気温や湿度などを常時計測し、屋外では風速、風向なども計測する。ハウス内の温度が設定値を超えると屋根の一部を自動で開けたり、細かな霧を噴射したりする。雨が降れば屋根が閉まり、また、日射量に合わせて、灌水の量を調整する。手作業だった部分を一つ一つ自動化し、状況に応じて複合的に作動するようにした。ハウスを離れていてもスマホで内部の環境が確認できる。自作することで市販のシステム導入に比べてコストを数分の一に下げられるだけでなく、故障など不具合が起きたとき、すぐに対応できる利点もある。

 西さんは、特に夏から秋にかけて収穫するパプリカ栽培でシステムを活用している。「理想的な温度に近づけられると、成長はぐんと変わる」。成長の記録と各種観測データを照らし合わせて、何が良くて、何が悪かったかを確認し、次のシーズンに生かす。今後加温も加え、生育を早めることで、品質が落ちやすい真夏を避け、有利な販売につなげていきたいという。

 農業従事者が減るなか、西さんは「環境制御システムは不可欠」という。一方で、「システム導入がゴールでもない」。大事なのは、販路も含めて、どういう意図、狙いでシステムを導入するかだと強調する。西さんは、地域の若手農家を対象に講座を開くなど、県内外を問わず、関心のある農家に技術を広げている。仲間が増え、情報交換することでレベルアップにつなげていきたいという。

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 紀の川市でキュウリを栽培する井上達也さん(39)は、西さんに教わりながらハウスにシステムを導入して2年目だ。ハウス内外の気温データを測定。細かな霧を自動で噴射できるようにした。急激な湿度変化は光合成に大きく影響するため、できるだけ変化を緩やかにするように環境を制御しようとしている。生育環境を安定化させたことで、導入前に比べて3割ほど収量が上がったという。

 また、スマホでハウスの状況がわかるので、管理のためにハウスに張りつくことなく、ほかの農作業に労力を回したり、余暇を楽しんだりすることもできる。「適切な管理と省力化も図れる。自分自身のストレスも軽減できるメリットは大きい」と強調する。

 今後、ハウスの屋根の開閉の自動化や、加温のために暖房の導入なども予定している。暖房導入により、現在は年内までの収穫を春先まで延ばすことを狙う。「自分の使いこなせる範囲で投資して、成果を上げ、さらに投資する。そういうサイクルを目指したい。チャレンジした方が絶対面白い」と話した。(西江拓矢)

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