小川裕介
拡大する女性が2018年にイラスト投稿サイトpixiv(ピクシブ)に投稿した漫画の一部(本人提供)
うまく話せないことがある吃音(きつおん)をからかわれ、一時は人と話すのに恐怖を感じていた女性(33)が、就職して働きながら自分の体験を漫画にまとめた。次期米大統領のジョー・バイデン氏も悩み苦しんだ吃音に対する社会の理解はまだ進んでいない。「私を助けてくれた言葉がもしかすると他の人の助けになるかもしれない」と考え、ペンをとった。
2年前、インターネットテレビABEMAで、吃音がある男子学生が就職活動で苦戦する姿を特集した番組(https://abema.tv/video/episode/89-82_s15_p1)を見たときだった。
その瞬間、吃音で苦しんだ記憶が突然鮮明によみがえる「フラッシュバック」が起きた。面接で思うように考えを伝えられない男子学生と自分が重なり、番組を見続けられなくなった。
「傷がかさぶたになっていただけで、治ってはいなかったんだ」
女性には3歳のころから、最初の音を繰り返すなどの吃音があった。小学校の音読では、発しにくい言葉をわざと飛ばして吃音を隠した。中学校では、全校生徒の前でクラス紹介を頼まれても断った。いつも人前で目立たないようにしていた。
中学や高校では、からかわれた記憶はない。だが、大学時代に飲食店でアルバイトをしたときだった。
「話し方、すっごいヘン」
同僚たちの言葉が胸に突き刺さった。
慣れない仕事とストレスで、吃音は悪化した。人と話すのが怖くなり、自信を失った。大人になれば吃音は治ると思っていたのに、二十歳を過ぎても治らないままだった。
人と話すのが怖いままでは、目標とする社会福祉の道も絶たれるのではないか――。誰にも相談できないまま、自室でひとり泣いた。
通学する山口県立大で、大石由起子准教授の臨床心理学の講義を受けたのはそんなときだった。吃音について説明するのを聞き、大石さんの研究室に飛び込んだ。
「きっ、吃音って治りますか?」
突然の来訪を受け入れてくれた…
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