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 衆院憲法審査会は26日、憲法改正の手続きを定める国民投票法改正案について初めて実質審議した。与野党の対立で2年あまり審議できていなかった。自民党にとって一歩前進をアピールできた格好だが、立憲民主党などは慎重姿勢を崩しておらず、改正案の成立は見通せていない。

 改正案は、大型商業施設への共通投票所の設置など7項目からなる。いずれも一般の選挙では導入されている内容で、与野党の対立点は少ない。しかし、改正案の成立は改憲への環境が整うことを意味する。成立後に、自民党が改憲論議を一方的に進めることを警戒する野党側が抵抗し、2018年7月から継続審議となってきた。

 この日の審議では、自民の中谷元氏が「民主主義の基盤にかかわる事項で速やかに成立を図るべきだ」と強調。これに対し、立憲の奥野総一郎氏は「7項目の先行採決ではなく、CM規制の改正があわせて必要」と述べ、ほかにも議論すべき課題は多いと指摘し、議論は平行線をたどった。

 2年以上も動かなかった実質審議に入ったのは、自民と立憲にそれぞれの事情があったからだ。

 臨時国会の会期が残り約1週間に迫るなか、自民党は今国会で採決することを見送り、立憲から審議入りという譲歩を引き出した。菅政権になり、少しでも改憲論議が進んでいることをアピールしたい自民は、「匍匐(ほふく)前進」(同党国対幹部)であっても審議を進め、来年の通常国会での成立につなげたい考えだ。

 一方、立憲には野党内で足並みがそろっていないという弱みがあった。改憲論議に前向きな日本維新の会に加え、合流新党に加わらなかった国民民主党も早期採決を容認した。

 野党内で改憲論議に前向きな勢力が増え、立憲や共産党を置き去りに議論が進んでしまう恐れがあった。とはいえ、立憲幹部は「野党の主張を踏まえた改正案の修正が必要だ」と話し、簡単には採決に応じない構えを崩していない。

 26日の審議では、維新の馬場伸幸氏がこうした経緯を念頭に「ポーズだけを示す茶番はもう結構」と批判。「直ちに採決を望む」とする動議を出したが、与党側は応じなかった。(大久保貴裕、山下龍一、石井潤一郎)

自民、年内の改憲原案策定を断念

 自民党が年内に策定するとしていた党の憲法改正原案が、先送りされる見通しとなった。今国会でようやく国民投票法改正案の審議に入れたことから、改正案の成立に慎重な立憲民主党などを刺激する動きは避けるべきだと判断した。

 自民は10月、改憲への機運醸成をはかるためには改憲項目の成案の提示が必要として起草委員会を設置。衛藤征士郎党憲法改正推進本部長が委員長に就き、憲法9条への自衛隊明記を含む「改憲4項目」について、具体的に条文化した成案をつくる方針を掲げた。

 野党からは「自民の独走」と批判があがり、自民内からも「素案を直す必要はない」などと異論が噴出した。こうした状況を踏まえ、起草委のメンバーから「同改正案の成立を優先すべきだ」との声が上がっていた。(石井潤一郎)