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 宮城県が検討している県立がんセンター(名取市)を中心とした病院の連携・統合構想を巡り、相手先となった2病院がある仙台市の郡和子市長は26日、村井嘉浩知事と会談した。周辺自治体が誘致に名乗りを上げるなか、移転に反対する姿勢を初めて明らかにした。

 「県民市民に安心してもらえる医療体制を構築して欲しい」

 郡市長は向かい合う村井知事に、こう求めた。県の構想では、地域のがん治療の拠点である東北労災病院(仙台市青葉区)と、総合病院である仙台赤十字病院(同市太白区)が連携・統合の相手先になっている。

 郡市長は、この2病院が移転した場合、周辺の医療体制に大きな影響を及ぼすなど課題が多いと指摘し、現地での存続を要望した。現地存続を求める地域住民や市医師会などの意見を反映した形だ。

 これに対し、村井知事は「もし統合という形になれば、頭になる病院が立地場所を決める」と返答。ただ、「協議している段階で、方針は決まっていない」と繰り返し、今後の方向性について明言しなかった。

 会談は冒頭のあいさつを除いて約40分間、非公開で行われた。双方が終了後、報道陣の取材に明らかにした。

 病院の連携・統合のきっかけとなったのは昨年12月。県立がんセンターを巡る有識者会議が「がんを総合的に診療できる機能を有する病院とすることが必要」との報告書をまとめた。がんだけでなく、合併症なども総合的に治療できる体制の整備を求めた。

 そこで県は、病棟建て替えの検討時期に差し掛かっている2病院も交えて協議を開始。人口減少で病院の経営環境が厳しくなることも想定した。村井知事は今年8月に構想を明らかにしたうえで、「年内に一定の方向を示したい」と強調した。

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 こうした県の方針について、仙台市民や医療関係者などからは、移転や統合に反対する要望が相次いで出ている。

 懸念されているのは、救急医療への影響だ。仙台市消防局によると、昨年1年間に救急搬送した4万7973人のうち、1割超を東北労災と仙台赤十字の2病院が受け入れている。

 さらに、仙台赤十字は県南の周産期医療を担っていて、移転すれば妊婦の負担が増すことにもなる。このほか、3病院に勤務する医療従事者の間では、移転統合に伴う雇用への不安も広がる。

 ただ、この日の会談後、村井知事からは、仙台市内に医療機関が集中していることを問題視する発言も出た。周産期の重症患者らを受け入れられる県内三つの病院はいずれも仙台市内にあるとして、「一つの課題だと受け止めている」と話した。

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 一方、仙台市周辺の自治体では、移転を前提とした「新病院」の誘致合戦が熱を帯びている。

 大規模な病院がない富谷市。連携・統合構想が公表された翌9月、若生裕俊市長が「県内のどの市町村からも高速道路で1時間で来られる」と誘致を表明した。村井知事に直接要望し、近隣の大和町や大郷町、大衡村とも連携。1千床を超える病院用地が確保できるとし、地下鉄駅からのシャトルバス運行も検討しているという。

 県立がんセンターが立地している名取市の山田司郎市長は、センターの市外移転を懸念している。

 仙台空港があるなど交通の利便性が高い地域であることを強調しつつ、誘致に取り組んでいる。市内に総合病院がないことから、「仙南医療の拠点に」との思いだ。(窪小谷菜月)