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 東日本大震災から10年になるのを前に、関西学院大学災害復興制度研究所(兵庫県西宮市)が27日、東京電力福島第一原発事故による避難者を対象にした調査の結果を発表した。避難が仕事や収入、家族関係に大きな影響を与えている状況に加え、故郷に思いをかけながらも、帰れない状態に悩む姿が浮かび上がった。

 調査は7~9月、全国の生活再建支援拠点などを通じ、調査票を郵送して実施。694人が回答した。避難者に関する調査は復興庁が福島県内の7市町村の住民を対象にしているものはあるが、福島県外の自治体から別の自治体に避難した自主避難者を含めた大規模な調査は初めてという。

 回答者の震災当時の住所は福島県内が75%で、元の住所の現状は帰還困難区域が14%、避難指示が解除された区域が20%だった。強制避難を余儀なくされた地域からの避難者は、東北と関東に多く、それ以外の自主避難者は北海道と中部以西に散らばっていた。

 帰還困難区域に指定されている地域からの避難者は、9割弱が元の住所に住民票を置いていたが、福島に戻る意向を示したのは2割にとどまった。住民票を残している理由として、自由記述で、税の減免があるなど経済的な事情を挙げる回答があった一方、「長い間、生活していた所から住民票を移すことには抵抗がある」「お墓や土地がまだ残っており迷いがある」などの回答があった。

 全体(複数回答)で元の住所に戻っていない理由は、「山林や草地の汚染が残っている」(46%)と、「現在の居場所で落ち着いている」(45%)がほぼ同数だった。

 避難は仕事と収入に大きな影響を与えている。震災前と現在を比べると、農林水産業や中小企業の労務職、自営業が減少。帰還困難区域と避難指示が解除された区域からの避難者では無職と専業主婦が増加。自主避難者はパート・アルバイトが増えた。世帯収入は300万円以上が減り、300万円未満が増えた。

 人間関係の希薄化も顕著で、「困った時に助け合う人がいる」と答えた人は、52%から19%まで減った。

 避難は家族の形も変えた。単身世帯は6%から13%に倍増。配偶者と別居し同居家族が未婚の子どものみの世帯は特に自主避難者で増え、4%から16%と4倍近くに。離婚経験者は14%おり時期は半数以上が震災後だった。3世代同居の世帯は11%から5%に半減しており、世帯分離が進んだことが明らかになった。

 同研究所の斉藤容子准教授は「生活の満足度は低下しており、まだまだ復興の途上にある。一人ひとりに寄り添い、新しい土地でも生きていけるような支援体制が必要だ」と語った。(千種辰弥)