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 クロノリの養殖が盛んな三重県鳥羽市の答志島の漁師たちが、島の周辺に流れ着く大量のごみに悩まされている。絡まったごみが養殖用の網を傷つけたり、ごみがクロノリに付着して出荷できなくなったりするなど深刻な被害が出ている。

 伊勢湾に面する奈佐の浜の沖では、冬になるとクロノリの養殖用の網が一面に広がる。幅約1・2メートル、長さ約18メートルの白い網が4千枚以上も張り巡らされ、巻き付いたクロノリの株の成長とともに真っ黒に染まっていく。

 収穫は12月から来年4月まで続くが、養殖業者の大峯幸喜さん(55)の表情を、流れ着くプラスチックや流木などの大量のごみが曇らせる。流木が網に絡まると網は破れてしまい、プラスチックの破片がクロノリに紛れ込んで出荷できなくなり、数百万円の実害が出た年もあったという。

 農林水産省の2019年度の「農林水産統計」によると、県内のクロノリの生産量は約4400トンあり、答志島は県内の主要産地の一つに数えられる。鳥羽磯部漁業協同組合桃取町支所の管内ではワカメやカキの養殖も盛んだが、漁業出荷額の半分以上をクロノリが占める年もある。

 木曽三川から伊勢湾に流れ込む水には、山からしみ出たリンや窒素などの栄養が豊富に含まれている。伊勢湾口にあたる答志島には栄養をたっぷりと含んだ潮がぶつかり、クロノリの品質が向上するという。

 四日市大学の千葉賢教授(沿岸海洋環境学)によると、伊勢湾には11月から春にかけて北西風が吹き、答志島には県外から出たごみが流れ着きやすいという。特に奈佐の浜は伊勢湾に向かってU字形に開けており、「野球グラブのようにごみを捕まえやすい形になっている」と指摘する。

 環境省は07年、伊勢湾の漂流ごみの問題を解決するための調査として、木曽三川などの上流から位置情報を発信する装置をつけたペットボトル18本を放流した。うち6本は答志島に漂着し、島にごみが流れ着きやすい結果が示された。

 一方、県は、09年と10年に県内14カ所の浜に流れ着いたごみの量から、伊勢湾内で漂流するごみの量は年間1万2千トンほどになると推計。そのうち約3千トンが答志島に流れ着くとみられる。

 同支所の元理事で、奈佐の浜の保護に取り組む小浦嘉門さん(64)は、12年に「22世紀奈佐の浜プロジェクト」を立ち上げて清掃活動を続けてきた。学会や国際会議でも現状について報告しており、プロジェクトのメンバーは1千人を超えた。小浦さんは「答志島だけでは解決できない問題だ。伊勢湾のごみ問題を広く知ってほしい」と話す。(村井隼人)