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 神戸市内でサッカースクールを運営する一般社団法人「マイスター」が、SDGs(持続可能な開発目標)を詰め込んだサッカー場を同市西区につくる。熱くなりがちな人工芝コートを雨水で冷却するシステムや、AI(人工知能)搭載の照明を備える全国でも例のない施設で、来年12月の完成をめざす。

 建設予定地は、同区平野町の田畑や山林が広がる地域。約9100平方メートルの敷地に、人工芝のサッカー場(4千平方メートル)と2階建てクラブハウス、倉庫、芝生広場などをつくる。

雨水で人工芝冷却・照明にAI…

 マイスターは、滝川第二高校のサッカー部OBらが2014年に設立。幼児と小学生が対象のサッカースクールと、中学生チーム「マイスター須磨」を運営しており、約350人が通う。月会費やスポンサーの協賛金で運営し、ドイツには6部リーグのアマチュアクラブ「バサラマインツ」もある。24年までに社会人によるトップチームをつくり、Jリーグへの参入を目標としている。

 これまでは、滝川二高や神戸総合運動公園のグラウンドを借りて練習してきた。2017年からは障害のある子にサッカーを教える活動も始めたが、安全面を理由に施設側から難色を示されることが多く、自由に使えるグラウンドを必要としていた。

 マイスターの理事井口洋平さん(36)らは、スポーツを通じたSDGsへの貢献が海外で進んでいることを知り、今年1月、先進地のオランダを視察に訪れた。20世紀を代表するサッカー選手の1人、ヨハン・クライフ(1947~2016)の財団が、障害のある子にサッカーを教えている。

 首都アムステルダムには、100カ所以上の人工芝コートがあり、子どもたちが気軽にサッカーを楽しんでいる。ただ、人工芝は天然芝に比べて管理は楽だが、強い日差しを浴びるとアスファルトよりも温度が上昇する弱点がある。

 その問題を解消するのが、コートの地下に雨水をためて気化熱で人工芝を冷やす設備だ。夏場は60度にもなる表面温度を4割ほど下げられるという。「スポーツから気候変動に取り組む。新しい気づきでした」と井口さん。

災害時のトイレ用水にも

 神戸のサッカー場にもこのシステムを導入する。ためた雨水は、災害時に地域住民のトイレ用水などに活用することも考えている。井口さんによると、イングランド・プレミアリーグのリバプールや、スペイン1部リーグのレアルマドリードの本拠スタジアムにも導入されているという。

 「気候変動に具体的な対策を」「すべての人に健康と福祉を」「住み続けられるまちづくりを」など、国連が掲げるSDGsに沿った設備を、新たなサッカー場の随所に盛り込む計画だ。

 照明は、電力消費量が少ないLEDとするだけでなく、子どもや高齢者にとって見やすい照度や色味をAIが判断し、自動制御できるシステムを採用する。米大リーグのヤンキースタジアムでも使われているものだ。

 クラブハウスは兵庫県産の木材を使い、荒廃する山の価値や大工の技術を伝えるショールームと位置づける。

 フリーキックの練習ができる倉庫の壁には、砂漠の砂からコンクリートをつくる技術を開発したドイツ企業のコンクリートブロックを使う予定だ。5種類のブロックを組み合わせるだけで建物を建てられるため、アフリカでは建築の知識や技術がない人にも雇用を生み出しているという。

 芝生広場では、地元でとれた野菜や米を売るなど、地域住民が集まる場所にする。高齢化が進む地域の実情もふまえ、サッカー場を使っていない時は、高齢者の体づくりなどに使えるようにしたいという。

 マイスター代表理事の岡良一さん(34)は「世界規模で見ればわずかな効果かもしれないが、小さな『まちクラブ』から大きな挑戦をしていくことに意味がある。日本でもこうした動きが広がってくれたら」と話している。(滝坪潤一)