[PR]

 小説を通して魅力を伝えたい――。茨城県稲敷市の地域おこし協力隊・水元翔太さん(29)が、稲敷を舞台にした小説集「いなしき小説」を出版した。地元の特産品レンコンを作る農家や、毎冬市内の干拓地に飛来する国の天然記念物オオヒシクイなどを題材に、稲敷ならではの自然豊かな光景を描いている。

 水元さんは千葉県市川市出身。警備会社や郵便局に勤めた後、2017年に市主催の移住ツアーに参加して霞ケ浦や田んぼが広がる雄大な景色に詩情をそそられた。「住んでみたいな」。協力隊に応募し、18年春に着任した。

 ただ、地元の人たちがその魅力を感じていないのが気がかりだった。「小説で魅力の再発見につなげたい」。19年夏から市立図書館に配属され、今年6月から小説を書き始めた。中学生の頃から小説を書き、講談社の文学賞などにも応募したことがあるという。

 収められている作品は4編。このうち、「泥中(でいちゅう)の蓮(はす)」は、50年前のレンコンの特産地・浮島にタイムスリップしたレンコン農家の2代目が主人公。レンコン作りに情熱を燃やす若き日の父親に出会い、農家として成長していく姿を描く。

 市の広報誌7月号から同名で連載する一方、連載を膨らませて小説を書き上げた。「農家の仕事の偉大さを伝えたかった」。連載は来年3月まで続く。

 作品中最も長い「残映(ざんえい)」には、オオヒシクイの群れに入れないマガンが登場する。「居場所がないことに悩むのは私たちの共通テーマです」。最後に、北へ帰るマガンとオオヒシクイの群れに向かって、野鳥観察員が叫ぶ場面が印象的だ。

 「またこの稲敷に来てくださいね! 私たちはずっと、待ってますから!」

 水元さんは「1冊にまとまってうれしい。稲敷にゆかりがない人でも、田舎暮らしや自然が好きな人には興味をもってもらえるのでは」と期待する。協力隊の任期は来年3月まで。美浦村の会社に就職が決まり、稲敷市に定住して小説の執筆活動は続けるという。

 「いなしき小説」は文庫本サイズで270ページ。200部を発行。市内の飲食店や健康センターなどに無料で配布した。好評のため25日に200部を増刷した。

 問い合わせは水元さん(090・8891・3728)へ。(佐藤清孝)

関連ニュース