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 今年の芥川賞を受賞した「首里の馬」について、著者で富山市出身の高山羽根子さん(45)らによる座談会が29日、県教育文化会館(富山市舟橋北町)であった。約90人が訪れ、高山さんが作品に込めた思いや作家としての心構えについて耳を傾けた。

 高志の国文学館の主催。冒頭のあいさつで中西進館長は「日本離れしたスケールの大きな作品。高山さんは今後稀有(けう)な作家として成長するのでは」と述べた。

 座談会は富山大の西田谷洋教授(日本近代文学)らと意見を交わす形で進んだ。西田谷教授が作品の随所に「既存の枠組みにとらわれないものの見方がある」と話すと高山さんは「宇宙人が読んだ時に理解してもらえるか。彼らからはどう映るのかを意識して書いている」と述べ、自明と思われる「知」の解体を試みたことを明かした。

 作品の主要テーマ「記録」についても話し合われた。事実を記録することは人によっては「怖いこと」という高山さん。反対に「残すことは希望」といって記録に邁進(まいしん)する主人公のような人もおり、どちらの視点も「作品に残したいと思った」と話した。

 高山さんは、作家として多様な意見や視点を提示したいという。例えばコロナ禍で、「正しく怖がる」という視点以外にも「マスクをしない人」や「怒って怒鳴ってしまう人」の視点も重要と指摘。正論を示すことにとどまらない文学の役割について述べた。

 最後に今後の展望について聞かれた高山さん。「本を手にとってくださる人には、確実にどこか行ったことのない場所に行っていただけるような本を書きたい」と話した。(田島知樹)

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