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 大阪府太子町は、町内の高齢者を病院などへ送迎しているボランティア団体に、公用車を無償で貸し出す事業を始めた。自分で運転するのはやめ、公共交通機関の利用も難しい高齢者の外出機会を増やそうと、住民主体の取り組みを側面から支援する。

 「いつもありがとうございます」。太子町太子の自宅前で軽ワゴン車から降りた奥村英三さん(81)が、ハンドルを握るボランティア団体・寿喜菜(すぎな)の会のメンバーに声を掛けた。ピンク色のこの車は、町が新たに導入したバリアフリー対応の公用車だ。

 奥村さんは週2回、8キロほど離れた富田林市の病院に通う際、同会の移動支援サービスを使っている。高齢になり、持っていた自家用車は手放したという。「町内にタクシー会社がなく、こういうサービスは本当に助かる」と奥村さん。

 奥村さんのケースでは、送迎料金は往復1600円。乗車前と降車後の付き添いなどに対する補助として、町が団体に1200円を出している。

 府東南部に位置する太子町は人口約1万3千人で、高齢化率は3割に迫る。町内には鉄道の駅はない。コミュニティーバスや民間バスは走っているものの、坂が多く、「バス停まで歩くのもつらいとの声が少なくない」(町高齢介護課)。

 大きな病院も町内にはない。運転免許証を自主返納するなどする高齢者も増えており、通院時などの「足」をどうするかが課題になっていた。

 町と町社会福祉協議会は2016年、高齢化の進展で今後必要となる生活支援の「担い手」を発掘するための勉強会を町内の各地域で開いた。その場でも多くの参加者から「気軽に外出できる移動手段が少ない」との声が上がった。

 移動をどう支援するか。住民中心で話し合いが進められ、翌17年には有志のグループが、自家用車を使った有償ボランティアのモデル事業を始めた。町は安全運転のための講習をしたり、補助金を出したりと側面支援に徹した。

 利用者は次第に増え、19年度に町内3団体による移動支援を利用した人は117人、回数は1292回に達した。

 町は新たな支援として、宝くじの助成金を財源に、団体が移動支援に使える公用車2台を今年10月に導入した。1カ月間で通院や買い物など計61回利用された。寿喜菜の会の土井勝代表(75)は「ガソリン代や車の維持管理費、保険料の負担がなくなり、ありがたい」と歓迎する。

 武部勝浩・町高齢介護課長は「行政主導ではなく、『ボトムアップ型』での合意形成をめざしてきた。今後も住民同士の助け合いを支え、介護予防や健康増進につなげていきたい」と話す。(白木琢歩)

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