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竜党のつぶやき 中日ドラゴンズへの深すぎる愛

 日本シリーズの前、どちらかの「4勝0敗」という予想をする野球評論家はあまりいない。ペナントを制したチームに失礼だと思うからだろうか。でも今回は、本音ではそれに近い見立てをしていた評論家もいたのではないか。

 素人野球ファンの中には、スイープ(4連勝)を予想していた人もけっこういたと思う。ソフトバンクは強かった。逆にこれだけ強いチームがなぜ2018年、19年シーズンは西武の後塵(こうじん)を拝したのか、不思議に思えるほどだった。

毎週火曜日の朝に、中日ドラゴンズにまつわる話題をお届けします。コラム「竜党のつぶやき」は毎月第1火曜日に配信します。

 第3戦をNHKBSで見ながら後半の継投で「07年の話になるな」と思ってたら、やはり来た。

 先発のマット・ムーアが巨人打線を無安打に抑えたまま八回に交代した。工藤公康監督はノーヒットノーランの可能性を、リバン・モイネロへの継投で自分から断ったのだ。

 アナウンサーは先発がノーヒットのままの交代は13年前の日本シリーズで……と引き合いに出した。説明は不要だろうが、07年11月1日、中日が日本ハムを1―0で破って53年ぶり日本一を決めた第5戦の、山井大介―岩瀬仁紀の「完全試合リレー」である。「あのときはさまざまな意見がありました」とのアナウンサーのコメントに、解説の小久保裕紀さんは「内情を知らない人はいろいろ言いましたが……」と、山井の指のマメがつぶれ、続投が難しかった、というふうに説明した。

 日本シリーズが続く限り、あの試合は、あの継投は、過去から召喚される出来事なのだった。

 日本一を決めたあの試合、私たちはナゴヤドーム1塁側内野席にいた。私と、第1回コラムで紹介したHさん。そう、エディ・ギャラードが満塁同点本塁打とサヨナラ本塁打を打たれ、巨人優勝が決まった00年9月の試合を東京ドームで観戦していた、年季の入った竜党の先輩だ。ほかにも同志2人がいた。

 日本一の瞬間をナゴヤドームで見届けた後、私たちはJR名古屋駅新幹線口近くの居酒屋に移動して、祝杯を上げることにした。

53年ぶりの日本一も、どこか覚めていた

 実はこの祝勝会の夜について、小さな疑心が13年の間に、心の中で芽生えてきていた。あれは、本当に日本一祝勝の宴(うたげ)だったのだろうか。疑いもなく日本シリーズ制覇の感激を確かめ合うビールの味だったのか。それにしては……。

 例えば、とこんな妄想にふけってみる。先週11月25日の夜、博多では、ソフトバンクファンが4連覇、しかもペナントを制覇しての日本一に盛り上がったに違いない。「来年は間違いなくV5だな。V9を超えるしかない。今年も補強は必要だよ」とか「モイネロのカーブってセ・リーグの打者は打てないな。ああいうカーブを投げた左腕が昔中日にいたじゃん、誰だっけ?」とか「中村晃って帝京の4番で、智弁和歌山と甲子園ですさまじい試合をしたときからおれ買ってたんだよ」といった話を楽しくしながら、日本一の美酒を交わしあったに違いない。

 私たちは13年前、53年ぶり日本一という興奮の中、そんな楽しい会話に終始していただろうか。もちろん歓喜の時間だったには違いない。ただ、生ビールと焼酎で酔いが回る中でも、頭のどこかが妙に覚めていたように思うのだ。

 試合直後から、ドラゴンズや竜…

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