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 ジビエ(野生鳥獣の肉)で地域を元気に――。農作物へ大きな被害を与えている野生鳥獣を食材として生かすことで、地域の活性化にもつなげようと、和歌山県が力を入れている。県内では住民や行政などが中心となり、個性を生かした取り組みも進む。ジビエを巡る動きを追った。

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 県によると、県内の野生鳥獣による被害額は2019年度が約3億円。近年は横ばいだ。鳥獣別の割合は、イノシシが50%と最も高く、シカ15%、サル14%と続く。作物では、果樹が78%、野菜11%、水稲6%。

 県畜産課によると、捕獲頭数のうち、ジビエとして活用されるのは5%程度。県は、被害を食い止めるとともに、ジビエとして安全に供給できるようにと、処理施設における「わかやまジビエ衛生管理ガイドライン」を09年に作成。これをもとに、14年に「わかやまジビエ処理施設衛生管理認証制度」を定めた。現在、県内の処理施設のうち、和歌山市や古座川町などの5施設が認証を受け、稼働している。

 合わせて制定したのが、全国初の肉質等級制度。ジビエは自然のものなので、品質のばらつきは仕方のない面がある。しかし、買い手としては、「手元に来てみないとどんな肉かわからない」ということが、積極的に採り入れる一つの障壁だった。そこで、皮下脂肪の厚さ、肉の締まり・きめなどで、イノシシは3等級、シカは2等級で示した。

 県は、17年度からジビエの学校給食への導入も進め、今年度は小中学校などの9割にあたる328校で実施予定だ。

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 ジビエ販売「いの屋」(和歌山市)を営む北浦順嗣さん(72)は狩猟歴半世紀のベテラン猟師。飲食店や処理施設などで作る「わかやまジビエ振興協議会」の会長も務める。

 もともと、解体した肉を知り合いらに譲っていたが、さばききれなかった。もったいないとの思いから、10年ほど前にいの屋を始め、自分や仲間がとった物の販売を始めた。14年に県の認証制度にもとづく第1号の認証を受けた。

 北浦さんが会長を務める一般社団法人「和歌山鳥獣保護管理捕獲協会」の会員の猟師ら約70人が捕獲したイノシシ、シカを扱う。肉質保持のため、買い取るのは紀北から有田地域までの範囲で、夏はとどめを刺しておおむね1時間以内、冬は2時間以内としている。主にわな猟でとらえたもので、猟銃で腹部を撃った物は買い取らない。扱い量はイノシシとシカを合わせて年間400頭ほどという。

 販売先は県外が6割。東京の飲食店などからは、「高くてもいい物がほしい」との声が強く、県の肉質等級制度が助かっているという。以前は「いいとこ送ってよ」と言われて送っても、こちらの「いい物」と先方のニーズが合わない時があったからだ。等級があることで、「お客さんのリクエストに応えやすい」と北浦さんは言う。最近はジビエの認知度も上がり、健康によいとのイメージもあって、一般客からの注文も増えてきているという。

 ここ2年ほどで需要が急増しているのが、ペットフード用。特に高たんぱく低カロリーのシカは、高級ドッグフード用としての扱いが増え、単価も上がっているという。北浦さんは、「まとまった量で取引ができるので助かる」と話す。

 猟師の高齢化が進むなか、北浦さんは狩猟免許をとったばかりの初心者らにわなのかけ方を指導するほか、捕獲協会の解体担当のベテランを各地に派遣して処理方法の普及にも努めている。「みんなで協力しあい、ジビエで盛り上がっていかないと、野生鳥獣は減らせない」(西江拓矢)

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