「呼吸苦の女性。3日前のPCRは陰性でした」
30日午後5時半、東京都三鷹市の杏林大病院高度救命救急センター。救急車からストレッチャーで運び込まれた50代女性の顔は、蒼白(そうはく)だった。
「いま、苦しい感じはどうですか? 少しは楽になりましたか?」
医師の呼び掛けに酸素マスクをつけた女性がうなずく。
新型コロナウイルスによる医療崩壊は、まず救急の現場に表れると言われる。
感染が拡大し、今やだれが新型コロナに感染しているのかわからない。医師や看護師は呼吸が苦しくなる医療用のN95マスク、目元を覆うシールドをつけ、ガウンを着て対応する。
「自分たちが万が一濃厚接触者になったら、休まなければならない。救急が回らなくなってしまう」と当直の荻野聡之医師。搬送された患者の感染が確認されれば、その後の消毒や、ライトや棚を覆うシートの張り替えなどに40分ほどを要する。
防護具は患者ごとに変える必要がある。荻野医師は「対応できる医師の数が少ない時、防護具を着ていると複数の患者を診られない。実感として、搬送を断る件数は増えている。新型コロナの見えない影響が出ている」と話す。
この日、センターでは先に薬物中毒の患者2人を受け入れており、三つある「初療室」はすべて埋まった。
だが3分後、新たに救急車が到着。「CCU(心疾患)来ました!」。男性看護師が声を上げる。
「肺出血を起こした救急患者の受け入れを六つの病院に断られた」「救急車が足りなくなり、病院の特殊緊急車両で同時に2人の搬送を検討した」。すでにこういった事態がおきていて、都内73病院や消防でつくる「東京都CCUネットワーク」の高山守正会長は危機感をあらわにします。
胸の痛みを訴える心筋梗塞(…

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