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 鹿児島県日置市の民家で2018年、親族ら男女5人を殺害したとして、殺人と死体遺棄の罪に問われている無職岩倉知広被告(41)の裁判員裁判の論告求刑公判が1日、鹿児島地裁(岩田光生裁判長)で始まった。検察側は「何の落ち度もない5人の尊い命が理不尽にも奪われた。反省や謝罪の言葉もなく、遺族の悲痛は大きい」として、死刑を求刑した。判決は11日の予定。

 起訴状などによると、岩倉被告は18年3月31日から4月1日にかけて、近くに住んでいた祖母久子さん(当時89)宅で、父の正知さん(同68)と久子さんの首を絞めるなどして窒息死させ、近くの山中に遺棄。4月6日には、安否確認のために久子さん宅を訪れた伯母の孝子さん(同69)、その姉の坂口訓子(くにこ)さん(同72)、近所の後藤広幸さん(同47)を同じく窒息死させて殺害したとされる。

 刑事責任能力が争点の公判で、検察側は岩倉被告がテレビを見るために訪れた久子さん宅で、久子さんに悪口を言われて激高したと説明。久子さんを殴った後、止めに入った正知さんともみ合いになってそれぞれを殺害し、その後訪れた3人に対しても言動に怒りを覚え、事件発覚を免れたい思いから襲ったとしている。被告が被害妄想を抱いていたことは認めたが、症状は軽く、犯行に与えた影響は軽微として完全責任能力があったと主張した。衝動的で攻撃的、他罰的な人格傾向に基づき、自分の意思、判断で犯行に及んだと訴えている。

 一方、弁護側は重度の妄想性障害を抱えていたと指摘した。親族らから迫害されているとの妄想にとりつかれ、善悪を判断する能力が著しく低下した心神耗弱の状態だったとして、減刑を求めている。

 罪状認否で被告は5人のうち、正知さんと久子さんへの殺意を否認しており、弁護側は正知さんについては正当防衛を、久子さんについても「首を絞めた事実はあるが、そのときはすでに死亡していた」と訴えている。(三沢敦、小瀬康太郎)