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 池澤夏樹個人編集『日本文学全集』(河出書房新社)で源氏物語を現代語に訳した小説家・角田光代さんが、物語の舞台に近い京都府宇治市の平等院で講演した。全3巻の完結後はじめて、源氏をテーマに角田流の読み方や解釈を披露した。

 池澤夏樹さんは私が唯一、サイン本を持っている作家。私がやりたい作品は源氏物語ではなかったが2013年、池澤さんのご指名だと編集者に聞かされ、断れなかった。2015年から3年で終える予定が、やってもやっても終わらず、気づいたら5年かかった。この間、自分の小説は書けなかった。デビュー以来一度もなかったことで、3年目から「(もう)小説が書けないのでは」と心配で、4年目からは「書き方を忘れたわ」と思いながら、訳していた。

 源氏物語を古典文学にはしたくなかった。「瀬戸内寂聴訳」「谷崎潤一郎訳」など本当に立派な訳があるから、一つぐらい格式のない訳があってもいいと思った。現代の小説のように読みやすい訳をめざした。

 源氏物語五十四帖(じょう)のうち上・中巻は光源氏が主人公。その死後、舞台を宇治に移した「宇治十帖」が下巻のハイライトだ。宇治十帖は男女のすれ違いの連続で、誰も幸せになっていない。上巻では「光源氏、たいがいにしなよ」と思って訳していたが、宇治十帖では、源氏が主人公の神の国から視点が人間界に降りる。源氏の死で物語が終わってもいいのに、紫式部は人生がうまくいかない様子まで書きたかったのかと思った。上・中巻はエンターテインメントに、下巻は純文学に近い。

源氏物語宇治十帖 五十四帖からなる長編小説のうち、第3部にあたる「橋姫(はしひめ)」から「夢浮橋(ゆめのうきはし)」まで最後の十帖。舞台が都から、貴族の別荘地・宇治へ移ることから宇治十帖と呼ばれる。主人公・光源氏の死後、源氏の子の薫(かおる)と孫の匂宮(におうのみや)、そして3人の女性をめぐる物語。薫、匂宮2人から求婚される浮舟(うきふね)がヒロイン。

 更級日記に、作者の菅原孝標女…

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