[PR]

◇第5次男女共同参画基本計画で、選択的夫婦別姓をめぐって盛り込まれる内容(原案)

 女性の就業者数が増加し、婚姻後も仕事を続ける女性が大半となっている中で、女性の約96%が結婚に伴い氏を変更しているという現状がある。家族形態の変化や生活様式の多様化も進んでいる。こうした中で、婚姻前の氏を引き続き使えないことが婚姻後の生活の支障になっているとの声もある。具体的には、

・論文の連続性が認められないなど仕事の実績や成果が引き継がれない、旧姓の通称使用は企業と本人にコストがかかる、など女性活躍の妨げになっている

・パスポートへの旧姓併記については、パスポートの所持人が渡航先国の出入国管理当局などから説明を求められたり、査証(ビザ)や航空券の氏名に旧姓を使用するとパスポートの氏名と異なりトラブルとなるなど、国際社会で通用しないことがある

・実家の姓が絶えることを心配して結婚に踏み切れず少子化の一因となっている

などの意見が寄せられている。

 また、最高裁判所大法廷判決(平成27年12月16日。以下「最高裁判決」という)は、民法の規定する夫婦同氏制について、「氏は、家族の呼称としての意義があるところ、現行の民法の下においても、家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位と捉えられ、その呼称を一つに定めることには合理性が認められる」などとし、民法の規定する夫婦同氏制は憲法に反しないと判示したが、3名の女性裁判官からの意見として、「夫の氏を称することは夫婦となろうとする者双方の協議によるものであるが、96%もの多数が夫の氏を称することは、女性の社会的経済的な立場の弱さ、家庭生活における立場の弱さ、種々の事実上の圧力など様々な要因のもたらすところであるといえるのであって、夫の氏を称することが妻の意思に基づくものであるとしても、その意思決定の過程に現実の不平等と力関係が作用しているのである」との指摘がされている。

 国際社会において、夫婦の同氏を法律で義務付けている国は、日本以外に見当たらない。女子差別撤廃委員会の総括所見においては、平成15(2003)年以降、繰り返し現行の制度について懸念が表明されており、実際、令和元(2019)年の「ジェンダーギャップ指数」(GGI)が153カ国中121位となっているなど、我が国の女性の地位に係る国際的な評価は著しく低い状況にある。制度の在り方の検討に当たっては、こうした国際的な視点も踏まえていく必要がある。

 国民意識の動向をみると、平成29(2017)年12月に実施された「家族の法制に関する世論調査」では、選択的夫婦別氏制度の導入について「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」とする回答は42.5%と5年前に比べて増加しており、特に18歳から49歳の女性では50%を超えている。他方、「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」とする回答は29.3%、「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない」とする回答は24.4%となっている。また、現在の夫婦同氏制は、明治31(1898)年の採用以来、120年余りの歴史があり、別氏を選択した夫婦の場合、「夫婦の名字(姓)が違うと子供にとって好ましくない影響があると思う」とする回答が62.6%ある一方で、「家族の一体感(きずな)には影響がないと思う」との回答が64.3%となっており、この問題については、国民の間に様々な意見がある。

 最高裁判決において、民法750条の規定は憲法13条(個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重)、14条(法の下の平等)、24条(家族生活における個人の尊厳と両性の平等)に違反するものではないとされ、また、同判決において、「いわゆる選択的夫婦別氏制」について、「そのような制度に合理性がないと断ずるものではない」とされた上で、「この種の制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」とされてから5年が経過している。なお、同判決では、15名の裁判官のうち5名の裁判官(3名の女性の裁判官を含む)が、同規定について、憲法24条に違反するなどの意見を述べている。以上のような状況に加え、我が国では、少子化の急激な進行により、一人っ子同士であることや、氏の問題で結婚をためらう人もあるとの声がある中で、若い世代が将来に展望を持ち、希望を実現できる社会にしていくために、様々な課題に正面から立ち向かっていく必要がある。

 新しい令和の時代において、国民の多様な声を真摯(しんし)に受け止め、「誰一人取り残さない」社会の実現に向けて、婚姻前の氏を使用することができる具体的な制度の在り方について、国会において速やかに議論が進められることを強く期待しつつ、国会での議論の動向などを踏まえ、政府においても必要な対応を進める。【法務省】