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 年間150万人以上が死ぬと予測される「多死社会」を前に、日本は新型コロナという予想せぬ災禍にも襲われた。私たちは今、死の意味が変わりつつある時代の中にいるのだろうか。事故や災害、病気などによる人間の生死の問題を、60年も現場から描き続けてきたノンフィクション作家の柳田邦男さん(84)に聞いた。

 ――月刊誌に発表したルポで、新型コロナによる死を「さよならのない死」と意味づけました。

 「コロナでは、入院した患者が家族と一度も会えないまま、亡くなった例が多くありました。『さよなら』を言えなかった死別は、残された家族の心に複雑なトラウマを生じさせることがあります。そんな問題意識を持ちつつ、コロナ患者を受け入れた病院関係者を中心に取材を始めました」

 ――志村けんさんも発症から約2週間で亡くなりました。みとれなかった肉親は遺骨の入った箱でやっと再会できた、と。

 「志村さんの死は衝撃的で、コロナ死の特異性を痛感しました。入院後、すぐ重症化し死に至るという点では突然死に近く、災害や事故、事件で突然、身近な人間を失ってしまう死別に近いです。米国のミネソタ大学のポーリン・ボス名誉教授の言う『あいまいな喪失』(ambiguous loss)に該当します。生きているか死んでいるかわからない別れという意味です。みとれずに遺骨だけが戻っても、家族はあいまいな喪失感を抱えたまま、葛藤に苦しむことがあります」

 ――感染が急拡大した春先は、病院が患者の家族のケアをする余力がなかったのでは。

 「それでも、急きょタブレット端末を40台購入した聖路加国際病院(東京都中央区)や、屋外のプレハブ面会小屋で患者と家族を機器でつなげた聖マリアンナ医科大病院(川崎市)、感染症専門病棟でiPadを使える体制を整えていた国立国際医療研究センター(東京都新宿区)などでは、患者と家族がオンラインで意思疎通することができました。画面越しに表情も見えるし、言葉をかけられる。双方に心の支えにはなりました。ただ、医師も『次善の策』と言っています」

 ――タブレットやiPadでは、対面と違いますか。

 「本質的に違います。その場で手を握り、体をさすり、耳元で声をかける。ぬくもりが言わば『心の血流』となって伝わります」

27年前に脳死状態となった次男を亡くした柳田さん。「無言の会話をした」という日々を振り返り、コロナ禍での弔いのあり方を考えます。

 ――画面越しでは、会話ができ…

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