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 結婚20周年を前にがんがわかった妻は、僕に料理を教え始めた。「アホッ」「なんやその手つき!」。それはとても厳しいスパルタ指導で――。そんな夫婦のかけがえのない日々をまとめた書籍「僕のコーチはがんの妻」が出版された。著者で元朝日新聞記者の藤井満さんが語る料理の力とは。そして、生きる力とは。

僕のコーチはがんの妻
「僕のコーチはがんの妻」は、昨年、朝日新聞デジタルで連載されました。その際の記事はこちら。

 ――妻・玲子さんとの日々について「料理はオアシスのような時間だった」と書かれてますね。

 料理に集中して手を動かす間はつらさを忘れられましたし、彼女のレシピはどれもおいしかった。

 一方で彼女は病状が進むうちに、自分が死んだ後のことを意識し始めたようです。はっきりとは言われませんでしたが、手間のかかる魚料理を教えられるようになって気がつきました。

 それまで、「おまえに魚をいじらせたら台所がくさくなる」と言われ、やらせてもらえなかったのですが、あるとき「イワシの梅煮」を、魚をさばくところから教わったのです。

 ――玲子さんは2017年に悪性黒色腫(メラノーマ)と診断されました。料理を始めたのは、玲子さんの負担を減らしたい、という思いもあったのでしょうか。

 食いしん坊な彼女は、料理を作っては「おいしい!」と自分で自分を褒めていました。市販のレシピ本をまねたものや、僕の転勤で一緒に各地を巡る中でその土地の影響を受けた彼女のオリジナルの料理もありました。

 二人暮らしで、手料理で晩酌するのが幸せな時間。一方の僕は家事が全くできず、結婚以来お任せ状態でした。病気がわかり、彼女も「教えとかんとやべえな」という気持ちだったと思います。

超初心者向け 鬼コーチレシピ集

 ――料理初心者で手つきが危うい藤井さんに、玲子さんはビシビシ突っ込んでいます。

 彼女は典型的な大阪人です。結婚前から自分をサルに見立ててイラストを描いて、ブログ「週刊レイザル新聞」に載せていたのですが、それとそっくりでした。

 料理ではまさに「鬼コーチ」でした。「大さじいくつやった?」と何度も聞く僕に、「そんなことも覚えられへんのか」とげきを飛ばしてましたね。

 ――レシピは全部で150ぐらいあったとか?

 キュウリを調味酢に漬けるといった簡単なものも含めれば、それくらいあります。メモに書いたり、彼女のブログに載せていたり、色々な形で残してくれました。僕は「鬼コーチレシピ集」と呼んでいます。

 普通のレシピ本には、「塩 少々」とか「味を調える」といった表現がありますが、超初心者の僕にはその量がわかりませんでした。

 彼女のレシピは、初心者の僕でもわかるよう、指示が細かく、工程は単純なものが多いです。150のレシピを2周して、ようやく「適量」とか「ひとつまみ」の感覚がわかり、市販のレシピ本でも理解して作れるようになりました。

 ――1年あまりの闘病ののち、玲子さんは18年9月に亡くなりました。すぐに料理を再開できましたか。

 「どれだけ料理を教えたと思っ…

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