井上秀樹
宝生流宗家の宝生和英は自ら能面を打っている。「構造を知って使いこなしたい」との探究心から始めて約10年。能面について聞くうちに、話は能楽の現在や将来へと広がった。
拡大する能LIFEOnline「生田敦盛」から(C)宝生会
演能の前、能面は大きな三面鏡で光の当たる角度や可動域を確かめて着ける。陰影で感情を表現する大事な準備だ。ただ、屋内にある能舞台は照明が変更できない。「能楽堂の研究は100年遅れてる」とまで言う。「どう光を当て、調整するかはシテ方の役割なんです。昔は太陽光が照明だったので要らなかった。能楽師は能面に対して興味がないので、演出の勉強を怠った」
東京・世田谷の静嘉堂文庫美術館で11月、能面にまつわるトークをした。同館では企画展「能をめぐる美の世界」で宝生流と縁のある新発田藩主溝口家の能面コレクションが公開されている(6日まで)。約120年前に所蔵して以来初めてという。17、18世紀の作品「大べし見」2面を着けた「鞍馬天狗」の演能が26日にある。和英は別の面で登場する。
拡大する宝生和英
トークでは、伝統芸能の違いを「歌舞伎や文楽は感情の動きを促すエンターテインメント、能は心理的負担を減らすアンビエント/チルアウト」と説明した。アンビエントは作曲家ブライアン・イーノが1970年代に提唱した「環境音楽」。チルアウトは90年代に生まれた、激しいダンス後の「ゆっくりする音楽」を元にする。
2008年に22歳で二十世宗…
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