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 「核のごみ(原発から出る高レベル放射性廃棄物)」の最終処分場の選定プロセスが北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村で動き始めた。選定プロセスの入り口にあたる「文献調査」が進んでいる。「核のごみ」のもとは原発で使った核燃料だ。福井県内の原発にも使用済み核燃料がたまり続けており、処分場を巡る議論の行方が注目される。(八百板一平)

 「核のごみ」は、使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す「再処理」の過程で出る廃液をガラスで固めたもので、「ガラス固化体」という。

 原子力発電環境整備機構(NUMO)によると、今年3月時点で国内のガラス固化体は約2500本。青森県六ケ所村と茨城県東海村の施設で一時的に保管している。多くは、国が再処理を委託した英国やフランスから戻ってきたものだ。

 NUMOによると、全国の使用済み核燃料は約1万9千トン。再処理すると、既存分とあわせて約2万6千本のガラス固化体ができるという。日本原燃が六ケ所村に建設中の工場がフル稼働すると、年間800トンを再処理し、1千本のガラス固化体が生まれるという。

 ガラス固化体を厚さ20センチの金属製の容器に入れ、分厚い粘土で覆って300メートルより深い地下に埋める。これが「地層処分」だ。1本の放射能量が天然のウラン鉱石並みになるのに、数万~10万年かかるという。

 国は青森県と「青森県内を最終処分地にしない」との約束をしていて、処分場の選定は大きな課題だ。

 選定プロセスは「文献調査」「概要調査」「精密調査」の三つで、資源エネルギー庁はあわせて約20年かかると想定する。調査に応じた自治体は国の交付金を受け取れる。文献調査で最大20億円、ボーリングなどの概要調査で最大70億円。NUMOは都道府県知事や市町村長の意見を聴き、反対があれば次の段階には進まない、としている。

 2007年には高知県東洋町が文献調査に応募したが、住民らの反対で撤回。国は17年に処分場の向き不向きを示した「科学的特性マップ」を公表、NUMOとともに各地で対話型説明会を開いてきた。

 国は使用済み核燃料を再処理して再利用する「核燃料サイクル政策」を掲げる。だが、再処理工場は完成しておらず、使用済み核燃料はたまり続けている。

 福井県内の関西電力の原発11基のうち、廃炉作業中の4基を除く7基では、再稼働が進むと6~9年程度で燃料プールが満杯になる見込みだ。関電は使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設の建設場所を探しているが、難航している。

 再利用も進んでいない。再処理で取り出したプルトニウムなどで作るウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)を使う「プルサーマル発電」を実施するのは関電高浜3、4号機(高浜町)、四国電力伊方3号機(愛媛県)、九州電力玄海3号機(佐賀県)の計4基のみ。MOX燃料を燃やす高速増殖炉は原型炉の「もんじゅ」(敦賀市)が廃炉になり、実用化のめどが立っていない。

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 福井県の杉本達治知事は9月県議会で、核のごみの最終処分について「電力の恩恵を受けてきた国民全体として解決していかなければいけない課題」と指摘。文献調査に手を挙げた自治体に批判の声が出ていることに、「原子力発電に対する理解が進んでいない状況にあり、大変残念。NUMOはもちろん、国が前面に立って説明責任を果たしていくべきだ」と述べた。

 「(文献調査に)手を挙げるという勇気ある決断に、まずは拍手を送りたい。電気を使ってきた人みんなで核のごみの後始末について考えなければ」

 鯖江市の市民団体「原発のごみ処分を考える会」の事務局長で、県地球温暖化防止活動推進員の鈴木早苗さんは言う。会は17年に発足し、核のごみや地層処分がテーマの勉強会を開いてきた。鈴木さんは、最終処分場の建設が進むフィンランドを訪れたこともある。

 鈴木さんは「このごみをどうするのか、というシンプルな問いを大切にしたい。原発の是非を巡る対立の枠組みを超えて、どう着地点を見つけるか。互いを認め合い、答えを導き出す過程を大事にしながら、様々な角度から議論することが大切だ」と指摘する。

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