[PR]

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、修学旅行で東日本大震災の被災地を訪れる学校が増えている。岩手県沿岸でも今秋、受け入れが増加。感染確認が少ない地域が選ばれている形だが、11月に入り県内でも感染者が急増していることから、先行きを懸念する声もある。

 栃木県の黒羽(くろばね)高校の2年生約130人が11月末から2泊3日で岩手沿岸の被災地を巡った。当初の訪問先は沖縄だったが、コロナ禍で行き先を変更した。

 震災で824人が犠牲になった山田町では、配布されたタブレット端末で震災前の街並みや押し寄せる津波の写真を見ながら、語り部から避難の大切さや、復興状況の説明を受けた。

 最終日には浄土ケ浜(宮古市)で遊覧船「第16陸中丸」に乗船した。3隻あった遊覧船のうち2隻は津波で廃船に。第16陸中丸は坂本繁行船長の機転でとっさに船を沖へ出し助かった。残る1隻で運航を続けてきたが、収益減や老朽化で来年1月の終了が決まった。これを知った生徒たちは「何かできることはないか」と考え、美術の先生と協力し大漁旗を製作。一人ひとりの名前を書き込み、坂本船長に手渡した。

 初めて被災地を訪れたという益子陽向(ひなた)君(17)は、「まだ復興は終わっていないと実感した。震災のことをもっと知りたいと思った」。学年主任の津村愛教諭(45)は「震災10年ということもあり、生徒には今も続いている問題として考えるきっかけにしてほしかった」と話す。

 陸前高田市の「東日本大震災津波伝承館」によると、今年度、小学校から大学までの団体予約数は215件(10月末時点)で、昨年9月の開館から今年3月末までの団体予約数(47件)の4・5倍。昨年度は首都圏が中心だったが、今年は8割が県内の学校だという。熊谷正則副館長は「こちらからの働きかけもあり、内陸の学校も被災地に足を運んでくれている」と手応えを感じる。

 一方、11月は県内でも5件のクラスター(感染者集団)が発生するなど、新型コロナの感染が急速に拡大した。街歩きや漁業体験を企画している山田町の体験観光コーディネーター服部真理さん(52)によると、学校関係の申し込みは例年より増加していたが、11月に入りキャンセルも相次いでいるという。

 「このままだと、またゼロになるんじゃないかという不安はある」と服部さん。山田町で語り部活動をしている昆尚人さん(46)は「若い人にこそ伝えていきたい。大変な時期だが、被災地のことも忘れないでほしい」と話した。(藤谷和広)