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 十字架の先のキリストを見上げるまなざし。胸の前で交差した手には燃える心臓。教科書でおなじみの肖像画が、大阪府北部にあった「隠れキリシタンの里」で発見されてから今年で100年になる。ある収集家の熱意で神戸にたどり着き、現在は神戸市立博物館(中央区)に所蔵されている。

 イエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエル(1506~52)は1549年に渡来し、日本で初めてキリスト教を布教したことで知られる。

 同館によると、肖像画「聖フランシスコ・ザビエル像」は、キリスト教の弾圧が厳しさを増した1623年以降に、西洋の絵画技法を学んだ日本人絵師が描いたと考えられている。

 それから300年近く。ザビエル像は1920年、現在の大阪府茨木市千提寺(せんだいじ)にあった旧家・東家で見つかった。東満理亜(まりあ)さん(71)によれば、禁教が解かれた後も隠され続けてきたという。

 これに着目したのは、生涯を神戸で過ごした南蛮美術品コレクター池長孟(はじめ)(1891~1955)だった。30代で旅した欧米で美術館を目の当たりにし、神戸での建設を志していた。

 何度も千提寺に通って説得を続け、35年に譲り受けた。資金捻出のため、別荘を一つ売り払った。

 その3年後に「池長美術館」(現・神戸市文書館)が完成した。展示された数々のコレクションの中にザビエル像もあった。

 しかし戦後、所有する美術品に多額の財産税がかけられるようになり、池長は手元に現金がほとんどない状況に。そして51年、美術館とコレクションを市に寄贈することにした。

 現在所蔵する市立博物館の学芸員塚原晃さん(56)は「純粋な日本美術ではなく、海外文化に触れた作品であることは、港町・神戸にもふさわしい。歴史を象徴する重要な作品に身近に接することができ、研究者としても光栄です」。劣化を防ぐため、普段はレプリカを展示している。実物を鑑賞できるのは年1回の限られた期間のみ。今年は11月3日から同23日まで公開され、コロナ下ながら約2600人がこの期間に来館した。

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 カトリック中央協議会によると、ザビエルは日本を離れ、中国本土での布教に向けた準備中に広東沖の島で亡くなった。468年前の12月3日と伝わる。(西田有里)

 池長孟の肖像写真の背景に写るのは「四都図・世界図屏風(びょうぶ)」。神戸市立博物館によると、池長が1932年に手に入れたコレクションの一つで、1610年代にイエズス会の絵画工房で日本人絵師が描いたと考えられている。

 同館で今月5日から始まる特別展「つなぐ」に出展される。来年1月24日まで。休館は毎週月曜(1月11日は開館)、今月28日~1月4日、同12日。午前10時~午後6時(金曜は同8時、土曜は同9時まで)。一般1千円、大学生500円、高校生以下は無料。問い合わせは同館(078・391・0035)。