閉店の水明亭「金出し、継ごうかと」カンニング竹山さん

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 神宮球場で野球ファンに愛された、うどん・そばの「水明亭」が6日の営業を最後に閉店する。「あの味を、今も食べたくてしょうがない」と語るのは、お笑い芸人のカンニング竹山さん(49)。店主の本村律枝さん(79)を「おかあさん」と呼び、大河ドラマいだてん」で本村さんの父親役を演じた。偶然の出会いから生まれた縁と、お店の思い出を語ってくれた。(編集委員・安藤嘉浩

「ばあちゃん家のような、たまらん付き合い」

 今から9年ぐらい前だったかな。神宮球場がある明治神宮外苑を散歩していたら、何とも歴史を感じる古い建物があったの。なんだこれ? お店みたいだけど、やってんのか? そう思ったのがきっかけだった。

 ――水明亭の本店は明治神宮外苑の木々の中に、ひっそりたたずむようなお店だった。

 昼だけ営業しているというんで、飛び込みで入ってみたんですよ。そしたら、すごい歴史があるお店で、店主は福岡県久留米市出身の人だという。看板メニューは久留米ちゃんぽんで、それが好物になって、昼間に時間があるときは通うようになったんです。生姜(しょうが)が利いていて、おいしかったんです。

 おれも出身が福岡市で、「おかあさん」(律枝さん)もおれも東京に出てきた。ふるさとを離れているんだけど、なんか近所づきあいができているような感覚で通っていました。

 ――水明亭の久留米ちゃんぽんは、昆布とかつお節のだしでとったあっさりしたスープに太めのちゃんぽん麺。盛りだくさんの野菜、肉、かまぼこ、ちくわがのっている。

 懐かしい味というわけじゃないんだけど、やっぱり福岡の人間はちゃんぽんを食べる機会が多かった。東京の人より親しんでいる。ちゃんぽんに対する距離感が近いんです。だから、母親の味というか、ばあちゃんの味という感覚がありました。

 ノスタルジックな店の雰囲気もあって、本当に小さいときから来ていたばあちゃん家に来た感覚。「おかあさん」のほかにも、おばちゃんたちが働いていて、すごい好きな雰囲気だった。「おかあさん」とも仲良くなって、すごいかわいがっていただき、たまらん感じの付き合いをさせていただいた。

偶然の出会いから、大河出演へ

 ――ある日、「おかあさん」から思わぬ話を聞いた。

 「竹山さん、NHKが来たとよ」というので、「なんの用だったんですか」と聞いたら、「2年後の大河ドラマで国立競技場ば、やるみたい。うちの店も出るかもしれんから、死んだお父さんの役を、あんたやってよ」と言われたんです。

 おれはお店の詳しい歴史を何も知らなかった。「お父さんがここをつくったと?」という感じ。水明亭は1964年東京五輪の前からあって、開会式のときは聖火リレーの最終ランナー(坂井義則さん)がここで待機したと、そのとき初めて教わった。「ああ、そういうことですか」と。

 そんなことをラジオで面白おかしくしゃべったら、クドカンさん(「いだてん」の脚本を書いた宮藤官九郎さん)が聞いていて、本当にお父さんの役をやらせてもらうことになった。うれしかったですよ。

本店閉店 まさかの「あんた、やってよ」

 ――竹山さんにとって、水明…

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