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 85歳だった首都圏に住む男性は、2020年もマラソンをし、ゴルフやパソコン教室、語学教室に出かける、活動的な日々を送っていた。

 せきが出始めたのは、3月25日ごろ。

 「お父さん、大丈夫?」。少し声がかすれていたように聞こえ、近くに住む長男が心配すると、「せきくらいするよ」。男性はそう答えていた。

志村けんさんが亡くなった

 新型コロナウイルス感染症の新規陽性者は、3月下旬に急増していた。27日に全国で116人を確認。28日には200人を超した。30日には、タレントの志村けんさんが亡くなったことがわかり、ひとごとではないと感じる人が増えていた。志村さんの追悼番組をみる男性の姿に、「いつまでもこうして父と時間を過ごしたい」。長男はそう思っていた。

 ところが4月2日、男性は熱を出した。4日の土曜日には38・9度まで上がった。1人で近くの診療所へ行くも時間外で診てもらえず、自宅に引き返す途中の男性に長男は遭遇した。

 「どうしたの?」。男性に高熱があると知った長男は119番に電話し、救急車を呼んだ。10分ほどで到着し、一緒に乗り込んだ。救急隊員はあちこちに電話をしたが、受け入れ先が見つからない。1時間ほど後、ようやく搬送先が見つかり、病院に運ばれた。

 新型コロナに感染しているかがわかるPCR検査と、季節性インフルエンザの検査の両方を受けた。インフルはすぐに陰性とわかった。PCRについては「陽性の場合はわかり次第、電話がいきます。陰性ならば郵送で伝えます。自宅で安静に療養していてください」。看護師らからこう言われた。

 男性の病状は、せきや息苦しさは目立っていなかったが、39度近くの熱があり、顔色は悪く、歩くのもやっと。年齢は80代と高齢だ。それなのに入院はできないのか。もどかしい思いを抱え、自宅に戻った。

 病気とは縁がなく健康だった、男性の苦しげな表情を見て、「新型コロナでなければいいのだが」。長男は心の中で祈っていた。

 解熱剤をのめば熱は下がるが、時間がたてばまた上がる。男性は、病院で受けた新型コロナのPCR検査の結果がわからないまま、自宅で療養をしていた。

 5日、長男が保健所に電話をした。「早くどこかに入院させてほしい」と訴えると、「PCR検査の結果次第です」。

 検査をした病院に「結果を知り…

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