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 【神奈川】「洋上の貴婦人」などと呼ばれる華やかな大型客船と違い、どこか油臭さを感じさせる。そんな貨物船のうち、高度経済成長期の1960年に建造された9隻=すでに廃船=を振り返る企画展が、日本郵船歴史博物館(横浜市中区)で開かれている。日本の発展を支えた貨物船や乗組員たちの往年の姿が、写真や映像を通じてよみがえる。

 同博物館によると、60年ごろは海運需要が増え、色々積む従来型の貨物船だけでなく、自動車や液化天然ガス(LNG)、石炭といった特定の貨物を積む専用船が出始める。数年後には規格化されたコンテナで効率的に荷役・輸送する「コンテナ化」が始まり、貨物船の過渡期にあたる。

 9隻のうち「瀬田丸」(総トン数=9271トン)は、「Sクラス」と呼ばれる当時最新鋭の高速貨物船だった。最高時速約38キロの速力を生かしてスエズ運河経由の欧州航路に就き、往路は缶詰や繊維製品、陶器など、復路はカリウムや砂糖、機械、セメントなどを運んだ。

 「玉山(ぎょくさん)丸」(同2429トン)は建造時から、輸入量が急増していた台湾産バナナの輸送を見越し、貨物を積むスペースの空気循環と温度管理を重視。このスペースは換気装置を完備し、上部の甲板は特殊な塗料で輻射(ふくしゃ)熱を反射させる工夫が施されていた。

 ほかに登場するのは、鉄鉱石専用船の「戸畑丸」(同1万4227トン)▽鉄道車両やプラント構造物の輸出に使われた重量物運搬船「若戸丸」(同7035トン)▽原油タンカーの「水島丸」(同2万5213トン)――など。また、日本郵船の社内報をもとに、乗組員が世界の寄港地で親睦野球をしたり、運動会やデッキゴルフ大会を楽しんだりしていたことや、精米機の導入で航海中もおいしい白米を食べられるようになったといった小話も紹介している。

 学芸員の小川友季さんは「貨物船は光が当たりにくいが、私たちの暮らしを支える『なくてはならない』存在。この時代ならではの役割や特徴をぜひ知ってほしい」。小川さんも「マニアックな企画」と認めるが、船舶ファンやかつての関係者、その家族らに好評を博しているという。

 展示期間は来年1月17日までの午前10時~午後5時。毎週月曜(祝日の場合は翌平日)と年末年始は休館。入館料は一般・大学生400円。問い合わせは、同博物館(045・211・1923)へ。(茂木克信)

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