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池井戸潤が撮る 日本の工場

 日本のもの作りを支えてきた工場の本質に、「半沢直樹」シリーズなどでおなじみの作家・池井戸潤さんが写真で迫る企画が、朝日新聞土曜別刷り「be」で連載中です。今回は千葉市のJFEスチール東日本製鉄所を訪れます。デジタル版では、池井戸さんが撮影した写真をふんだんにご覧いただけます。

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 鉄は国家なり。19世紀に武力によるドイツ統一をなし遂げた宰相ビスマルクの演説に由来することばだ。大砲など鋼鉄製の武器とそれを生み出せる産業の広がりこそが国力だった時代がかつてあった。

 製鉄は国家の歴史を抜きに語れない。ドイツだけには限らない。古代出雲の製鉄や明治期の富国強兵策。日本の歴史もまた、鉄とは無関係でいられなかった。

 広大な製鉄所の中に立つ池井戸さんに浮かんだのは、宿命的な鉄の歴史だったという。

 敗戦後の焼け跡から重化学工業を興し、貿易立国へと発展していった戦後日本の高度成長。その隆盛には、安価で高品質な鉄鋼の安定供給は欠かせないものであった。1951年に開設された千葉市にあるJFEスチール東日本製鉄所(当時は川崎製鉄千葉製鉄所)は、まさにそのパイオニアとして時代を牽引(けんいん)した製鉄所である。

 当時として最新鋭だったこの製鉄所を造ったのは、西山弥太郎。川崎製鉄初代社長となった西山の思想は、いまもこの製鉄所に息づいている。東京湾に突き出す広大な埋め立て地は東京ドーム164個分。遠くからでも見える巨大な溶鉱炉をはじめ、隣接する製鋼、熱延工場の灰褐色の堂々たる建屋には複雑なパイプが入り組む。大型船の着岸を可能としたこの臨海製鉄所には、海外からの原材料の受け入れや、製品の出荷をしやすくする利点があった。溶鉱炉の近くに関連の工場を集めた一貫生産もまた、物資の移動を短くし工程の効率化を進めている。

 溶鉱炉を見上げ、「独特の野趣を感じる」と池井戸さん。

 たしかにこの工場は、ちょっと…

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